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死刑執行に関する会長声明

2016年11月11日



法務大臣  金田 勝年 殿 

                   広島弁護士会 会長 爲 末 和 政

1 本日、福岡拘置所において45歳の男性死刑囚1名に対し、死刑が執行された。本年8月3日に金田勝年法務大臣が就任してから、初めての執行であり、前回の本年3月25日の執行から7か月あまりでの執行である。また、第2次安倍内閣以降で死刑が執行されたのは、10回目で、合わせて17人となった。極めて遺憾な事態であり、死刑執行について強く抗議する。
2 死刑の廃止は国際的な趨勢であり、2015年末現在、死刑を廃止・事実上廃止している国は140か国に上り、死刑を存置している国は58か国に過ぎない。また、2015年に実際に死刑を執行した国は更に少なく、日本を含め25か国にとどまる。加えて、いわゆる先進国グループであるOECD(経済協力開発機構)加盟国の中で死刑制度を存置している国は、日本・韓国・米国の3か国のみであるところ、韓国は、1997年の年末に執行して以来、約19年執行しておらず、事実上の死刑廃止国であり、米国は、死刑廃止州は19州、知事による執行停止州は4州あり、死刑制度が衰退している状況にある。このため、OECD加盟国の中で、死刑を国家として統一して執行しているのは日本のみである。
 国際人権(自由権)規約委員会は、日本政府に対し、2008年10月、総括所見において、「締約国は、世論調査の結果にかかわらず、死刑の廃止を前向きに検討し、必要に応じて、国民に対し死刑廃止が望ましいことを知らせるべきである。」等の勧告を行い、2014年7月24日には、死刑の廃止について十分に考慮することや、執行の事前告知、死刑確定者への処遇等をはじめとする制度の改善等の勧告を行っている。
 更に、2014年12月18日、国連総会において、全ての死刑存置国に対し、「死刑の廃止を視野に入れた死刑執行の停止」を求める決議が、過去最高数である117か国の賛成多数で採択されている。
 こうした国際的な趨勢及び国連関係機関から繰り返し死刑執行の停止・死刑制度の廃止に向けた措置を検討するように勧告を受けながらも、死刑制度を存置し、かつ死刑の執行を繰り返す日本政府の姿勢は際立っている。
3 また、死刑制度の大きな問題点の1つとして、死刑が一度執行されてしまうと権利回復は最早不可能であり、取り返しの付かない結果となることが挙げられる。
 1980年代に4名の死刑確定者に対する再審無罪判決がなされたことに見られるように誤判の可能性は否定できない。このほか、裁判当時においては判明し得なかった証拠上の問題点が科学技術の進歩により明らかになるという事情もある。実際、2014年3月27日、静岡地方裁判所は、「袴田事件」につき、犯行時の着衣とされていた衣類に付着した血痕のDNA型が袴田氏のDNA型と「一致しない」との鑑定結果を新規性あるものと認め、死刑確定者に対する再審を開始する旨の決定を下している。
4 日本弁護士連合会は、第2次安部内閣発足以降も、再三にわたり、法務大臣に対して要請書を提出し、死刑制度とその運用に関する情報を広く公開し、死刑制度に関する世界の情勢について調査のうえ、調査結果と議論に基づき、今後の死刑制度の在り方について結論を出すこと、そのような国民的議論が尽くされるまでの間、すべての死刑の執行を停止すること等を求めていた。
 更に、2016年10月7日、日本弁護士連合会は、福井市で開催された第59回人権擁護大会で、「死刑制度の廃止を含む刑罰制度全体の改革を求める宣言」を採択した。同宣言は、死刑制度とその代替刑について、 (1) 日本において国連犯罪防止刑事司法会議が開催される2020年までに死刑制度の廃止を目指すこと、(2) 死刑を廃止するに際して、死刑が科されてきたような凶悪犯罪に対する代替刑を検討することを国に対し求めるとともに、日本弁護士連合会としてその実現のために活動することを表明している。
 上記の要請等を無視してなされた死刑執行は、当会としても到底容認することができない。
5 当会は、今回の死刑執行に強く抗議するとともに、日本政府が速やかに死刑の執行を一時停止し、死刑制度の廃止に向けての全社会的議論をより深める取組みを行うことを求める。
以上