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民法の成年年齢引下げに関する意見書

2016年12月14日



民法の成年年齢引下げに関する意見書

                          広島弁護士会 会長 爲 末 和 政

第1 意見の趣旨
   民法の成年年齢引下げは,これによって生じるおそれのある諸問題に対する施策を具体的に講じないうちに実施することは,時期尚早である。 
 
第2 意見の理由
1 消費者被害の拡大のおそれ
成年年齢を引き下げることにより,18歳及び19歳の未成年者取消権を喪失させることになるが,これは若年者に対する消費者被害を拡大させるおそれがある。
たとえば,若年者の消費者被害としては,マルチ商法被害,美容医療サービスのトラブル,街頭でのスカウトなどから始まる勧誘被害,あるいはインターネット取引によるトラブルなどが挙げられ,多数の被害が発生している現状にある。これらの商法については,現在は20歳になるまでは未成年者取消権で保護されているため,事業者もそもそも勧誘しないし,契約してしまっても取消権行使で対応が可能である。ところが,未成年者取消権が18歳未満に引き下げられれば18歳及び19歳がターゲットとされ,被害が拡大してしまうおそれがある。
そのため,取引類型や若年者の特性に応じた説明義務及び取消権などの保護制度の創設等が必要となるところ,現在,このような保護施策は具体的に講じられていない。また,消費者教育推進法で求められている教育等の取組みは緒についたばかりであり,有効な施策の実施は不十分である。
2 養育費の支払終期の繰上げ
成年年齢の引下げに伴い,養育費の支払終期が繰り上げられてしまうおそれがある。養育費の支払時期については成年年齢と関係なく,「未成熟子」概念を基準とすべきであることの周知徹底がされるべきであるところ,そのような周知徹底のための施策の実施がされている状況にはない。
3 労働契約の解約権の喪失
成年年齢の引下げに伴い,未成年者に不利な労働契約の解除権(労働基準法第58条第2項)が喪失されることとなる。労働者被害を防ぐための権利教育,及び劣悪な労働環境を回避する制度や若年者保護の具体的制度の構築が必要であるが,施策は不十分である。
4 他法への影響
そのほかにも,民法の成年年齢の引下げに伴い,少年法の成人年齢の安易な引下げ論が強まることが懸念される。また,児童福祉法における支援後退のおそれや,未成年者喫煙禁止法,未成年者飲酒禁止法等の関連法令への影響も懸念される。このように,民法のみでなく他法に与える影響も検討の対象とすべきであるが,そのような検討が十分になされているとはいえない。
5 結論
以上のとおり,成年年齢を引き下げた場合の問題点に対する施策が十分になされているともいえない。これらの問題に対する具体的な施策を講じないうちに,民法の成年年齢を引き下げることは時期尚早である。
                                        以 上
以上