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「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律の一部を改正する法律案」成立に対して抗議する会長声明

2017年06月15日



                   広島弁護士会 会長 下 中 奈 美

第1 声明の趣旨
 当会は、「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律の一部を改正する法律案」の成立に対して抗議するとともに、今後も本法の問題点を指摘しつつ、法の廃止に向けた活動を行う所存である。
第2 声明の理由
1 2017年(平成29年)6月15日、いわゆる「共謀罪」の新設を含む組織的犯罪処罰法の一部を改正する法律案(以下「本法案」という。)が参議院本会議で可決成立した。
2 本法案は、当会が発出した2017年(平成29年)3月8日付会長声明において指摘したとおり、様々な問題点がある。
第一に「組織的犯罪集団」という要件は、処罰対象となる団体が、テロ組織、暴力団、薬物密売集団等に限定する文言はなく、一般の市民団体、労働組合等が処罰対象となる可能性がある。第二に、準備行為が行われたことを処罰条件として、その「計画」した行為を罰することは、未遂はもちろん「予備」にも至らない内心の意思を広く刑事処罰の対象とすることになり、法益侵害及びその危険性を処罰根拠としてきた我が国の刑法の基本原則と相容れない。第三に、上記「準備行為」は、刑法等で規定されている予備罪・準備罪における予備・準備行為より前の段階の危険性の乏しい行為を幅広く含んでおり、その適用範囲は十分に限定されたということはできない。「計画」した行為が主要な犯罪構成要件とされると、その捜査手法として、通信傍受や会話傍受が拡大されるおそれがあり、一般市民のプライバシーの侵害が懸念される。
  政府は、テロ対策のために本法案が必要であるとするが、制定のきっかけとなった「国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約」(TOC条約)は、もともと経済的組織犯罪対策を念頭に置いていたものであり、テロ対策を目的としたものではない。かつ、既に日本はテロ防止関連の13本の条約を締結しており、国内法においても、内乱・外患予備陰謀罪、殺人・強盗・放火・身代金目的誘拐の予備罪、凶器準備集合罪などが既に犯罪として規定されており、更に、化学兵器、サリン、航空機の強取、覚せい剤取締法、銃砲刀剣類所持等取締法など特別法で違反類型の中で予備罪が既に設けられており、テロ対策として新たに広汎な範囲に及ぶ計画段階にある予備以前の共謀を処罰する立法の必要はない。
3 本法案に対しては,全国各地で反対集会やデモ活動等が継続的に行われている。各種世論調査でも本法案の趣旨がわかりにくく、法案審議過程で法務大臣の答弁に問題があると指摘されるなど、慎重な審議を求める意見が多数を占めていた。
そのような状況であるにもかかわらず、本法案は、わずか衆議院で約30時間の審議、参議院では法務委員会で約18時間の審議で、同委員会での採決を行わず、中間報告により参議院本会議での採決に至っており、国会で十分な審議が尽くされたとはいえず、政府は、国会において、国民の不安を解消するだけの説明を充分に尽くしていない。
4 よって、当会は、本法案の成立に対して抗議するとともに、今後も本法の問題点を指摘しつつ、法の廃止に向けた活動を行う所存である。 
以上