| 1 | 私が、弁護士登録後1か月に初めて国選弁護人に選任されたのが本件事件です。 |
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2 | 事件の概要は、被告人が仕事を終えて、夕飯を食べながらお酒を飲んだ後、車で帰宅中に、後方から進行してきたトラックにちょっかいを出されたことに腹を立て、トラックを止めた上、トラック運転手の被害者に暴行を加え、傷害を負わせたという、道交法違反と傷害の事案でした。 |
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3 | 記録を謄写して読んで、飲酒していたので記憶がなかったりしたら大変だと思いながら接見に行きました。被告人は、事件のことをきちんと覚えており、自分がやったことに間違いないと話してくれたので、私は、自白事件と判断しました。 |
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被告人には交通事故関係以外の前科・前歴がなかったので、後は被害弁償をして示談できれば執行猶予は間違いないと思いましたが、被告人自身は被害弁償するお金がなく、親族とも疎遠なので親族に頼むことも出来ない状態でした。さらに、被告人は本件により勤務先を解雇されていましたが、元勤務先の上司が被告人のことを気に掛けてくれていたので、元勤務先に情状証人として出廷してもらうことになりました。 |
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そこで、私は、被害弁償は無理でも被告人が反省を示そうと考え、被告人の被害者宛の謝罪の手紙と、裁判官宛の謝罪の手紙を書証として提出し、後は、元勤務先の上司に情状証人として証言してもらい、被告人質問をして結審するという、弁護方針で公判に臨むことにしました。 |
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4 | 私にとって初めての刑事裁判法廷となる第1回公判がやってきました。ちょうど裁判傍聴セミナーの日で、傍聴人が50人くらいおり、気を引き締め直しました。 |
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検察官請求証拠には全部同意して、すぐに弁護側の立証に移りました。裁判官宛の手紙を原本ではなく、写しで提出するミスがありましたが、情状証人の尋問は、証人が被告人のために社会復帰後の就職の世話をすること等、考えていたことが証言として出せました。 |
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その後の被告人質問では、被害弁償ができなかった事情を聞くよりは、これからどうやって被害者に償っていくかを聞きました。また、被告人の反省を示すものとして、既に取り調べられた被告人の手紙に加え、法廷でも謝罪の気持ちを言ってもらいました。 |
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被告人は、パチンコで大負けをしていらいらしていたことと、酒を飲んで判断力が低下していたことを犯行の理由に挙げていましたが、裁判官は補充質問の質問内容からすると、パチンコで負けたり、酒を飲んだりしても、普通は人を殴らないのだから、被告人の挙げた理由は真の理由ではなく、これでは謝罪したことにならないと厳しく考えているようでした。 |
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私が、被告人に謝罪の手紙を書かせたのは、被告人に反省を深めてもらいたいがためだったのですが、結果的に、形だけ反省の言葉を引き出していたに過ぎないことを思い知らされました。私がすべきだったのは、裁判官宛の手紙をただ書かせるのではなく、被告人との接見で、「なんで?なんで?」と問いかけることで、被告人がしたことに向き合わせ、法廷でしゃべらせることだったと気付きました。 |
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補充質問を終え、裁判官は「これで結審してもよろしいでしょうか。」と私に意見を求めてきました。私が「はい。」と返事をすると、裁判官は「本当に、これで結審していいのですか。」と怖い顔をしてこちらを見ましたが、私は「はい。」と答え、1回で結審することになりました。 |
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5 | 結審後、裁判官に念押しされたことが心配になり、先輩の弁護士に相談したところ、被害弁償できなかった過程を裁判所に明らかにしていないので、裁判官は、まだ被害弁償の余地があると判断し、もう1期日入れようとしたのだと気付きました。 |
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私は、判決言渡期日までの間、被告人の了解を得て元勤務先の上司から被告人の未払給料から数万円を出してもらい、さらに、再度、被告人に自分のしたことに向き合わせて、被告人が被害者を殴った理由、被害者に対して被害弁償ができない理由を、できるだけ詳しく被害者宛の手紙に書いてもらいました。 |
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その上で、私は、被害者に電話して、被告人の手紙と被害弁償金を渡したいとお願いしましたが、被害者感情が厳しく私の願いは届かず、逆に検察側から、被害者の意見陳述を行うという話になりました。私は、まさか意見陳述まですることになるとは思ってもみなかったので、これは、もしかしたら実刑になりかねないと、悩みました。 |
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6 | このようにして迎えた判決言渡期日、検察側、弁護側双方から弁論再開の申し出があり、弁論が再開されました。 |
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私は、被害弁償ができなかった経緯を書いた報告書と被告人の被害者宛の再度の謝罪の手紙を提出しました。検察官は、起訴状の記載より治療が長引くという診断書を提出し、さらに、被害者の意見陳述がありました。被告人は、意見陳述後の、再度の被告人質問で、被害者の方を向いて涙ながらに謝罪しました。 |
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結局、被告人には、懲役1年6月、保護観察付き執行猶予の判決が言い渡されました。 |
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7 | 私は、本件事件を通じて、実務的なやりとりに慣れることの必要性、具体的事実を裁判所の前に顕出することの難しさ、悩んだときは他の先生に意見を求めることの重要性を痛感しました。 |
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弁護人の職務は、弁護士だけにしか認められていない重要なものだと思います。これからも、困難な事件も含めて刑事事件に取り組んでいきたいと思います。 |