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共謀罪の新設に反対する会長声明

2014年11月21日



2014年(平成26年)11月21日
広島弁護士会
会 長 舩 木 孝 和

過去3度も廃案となった「共謀罪」に関する法案(以下「法案」と言う)を、昨年来、政府はあらためて国会に提出する方針であることが報道されている。
政府が予定している共謀罪とは、「死刑又は無期若しくは長期4年以上の懲役若しくは禁固の刑が定められている罪に当たる行為で」、「団体の活動として」、「当該行為を実行するための組織により行われるもの」の「遂行を共謀した者」を処罰の対象とするもので、共謀罪が成立する犯罪は実に600を超えることになる。又、共謀罪の刑罰は、5年以下又は2年以下の懲役或いは禁固を科すというものである。2名以上の者が、対象犯罪を遂行しようと謀議をすることで、犯罪の実行行為や準備行為がなくても、それだけで犯罪が成立し処罰できるという内容である。
当会は、過去において会長声明を発し、共謀罪に関する憲法上の問題点を指摘するとともにその危険性を訴えてきた。つまり、共謀罪は、2名以上の者が対象犯罪を遂行しようと謀議しただけでこれを処罰できるものであるが、個人がどのような思想や信条を持ち、また、それをどのように表現するかを処罰の対象とすることは、憲法が保障する思想信条の自由、表現の自由、集会・結社の自由が害される危険が極めて高い。更に、捜査機関が、謀議を証明するためには、自白の獲得の外、会話、通話、或いは通信などを本人に秘密で聴取、閲覧する以外に証拠資料を得ることは困難である。そのため、自白の強要、或いは現在検討されている司法取引による密告、おとり捜査などが実施され、憲法が保障する刑事手続における適正手続の保障が害される危険も増大する。共謀罪は、国内法的に見ても上のように極めて問題があり、さらに予備以前の行為を処罰するという点から見ると、わが国の刑事処罰の体系の中でも極めて異質なもので、共謀罪を新設しなければ社会の安全が保てないという社会的な要請もなければ立法事実も存在しないものである。
また、政府は、「国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約」(以下単に「条約」という)を批准するために、共謀罪を新設しなければならないと説明している。しかし、条約を批准するために必要な「共謀罪」とは「組織的な犯罪集団が関与するもの」に限定され(暴力団とかマフィアなど組織的な犯罪集団によるものとされ、そうでない組織的なものは除外されている)、共謀の目的が「金銭的利益その他物質的利益を得ること」とされており(それ以外の目的の共謀については、条約批准のための要件とはされていない)、国内法でこれらの要件を充たす行為者を処罰できる法整備があれば、条約の批准は可能である。現在、組織的犯罪集団による犯行が予想される重大な主要暴力犯罪については、内乱・外患予備陰謀罪、殺人・強盗・放火・身代金目的誘拐の予備罪、凶器準備集合罪などが既に犯罪として規定されており、更に、化学兵器、サリン、航空機の強取、覚せい剤取締法、銃砲刀剣類所持等取締法など特別法で違反類型の中で予備罪が既に設けられており、判例上共謀共同正犯が処罰されているため、政府が提案するような新たに600を超える犯罪の共謀を処罰する必要なく、条約批准のためには、マネーロンダリングに対処するためのごくわずかの法整備を行えば足りる。
 以上のとおり、わが国において政府が提案する共謀罪を制定する必要性は存在しない。政府が提案する共謀罪が成立すれば、例えば市民団体や労働組合が、政府の政策に反対し、首相官邸前での座り込みなどの行動を検討するだけで、「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律」第3条第1項第11号(組織的な威力業務妨害の罪:5年以下の懲役)の共謀罪に該当するものとして、処罰されることも現実問題として発生し得るのである。このように共謀罪は、刑法の人権保障機能に違反し、基本的人権を侵害し、適正手続きに違反する運用が行われるなど、極めて問題と危険性が多いものである。
 よって、当会は、共謀罪の新設には断固反対であることを重ねて表明する。
以上