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生活保護基準について一切の引下げを行わないよう求める会長声明

2018年01月24日



生活保護基準について一切の引下げを行わないよう求める会長声明

2018年(平成30年)1月10日
広島弁護士会 会長 下 中 奈 美

1 生活保護費削減に係る厚生労働省の案について
 厚生労働省は、2017年(平成29年)12月8日、社会保障審議会生活保護基準部会において、母子加算及び児童養育加算を含む生活扶助基準の引き下げ方針を示し、同部会は、これを審議し、同月14日、「報告書」をとりまとめた。
厚生労働省の当初の方針の内容は、子どものいる世帯の生活扶助費は、都市部の夫婦子2人世帯で13.7%(2万5310円)、母子加算は平均2割(都市部で2万2790円の場合4558円)、児童養育加算については、現行3歳未満の1万5000円から5000円の削減をそれぞれ行い、また、学習支援費(高校生で5150円の定額支給)は廃止するという内容であり、高齢(65歳)世帯の生活扶助費は、都市部の単身世帯で8.3%(6600円)、夫婦世帯で11.1%(1万3180円)の削減をそれぞれ行うという内容であった。
しかしながら、厚生労働省は、各層から上記の大幅削減について批判を受けた結果、同月18日、2018年(平成30年)10月から3年かけて最大5パーセントの引き下げを行い、その削減額を160億円とする方針を決め、同月22日、内閣は、前記方針に基づく生活扶助費削減を含んだ予算案を閣議決定した。

2 生活保護費削減自体の問題点
 今回の引下げの考え方は、生活保護基準を第1・十分位層(所得階層を10に分けた下位10%の階層)の消費水準に合わせるというものである。
 しかし、我が国では、厚生労働省が公表した資料によっても、生活保護の捕捉率(生活保護基準未満の世帯のうち実際に生活保護を利用している世帯が占める割合)が2割ないし3割程度と推測され、第1・十分位層の中には、生活保護基準以下の生活を余儀なくされている人たちが多数存在する。この層を比較対象とすれば、生存権保障水準を引き下げ続けることにならざるを得ず、合理性がないことが明らかである。特に、第1・十分位の単身高齢世帯の消費水準が低過ぎることについては、生活保護基準部会においても複数の委員から指摘がなされている。また、前記の同部会報告書も、子どもの健全育成のための費用が確保されないおそれがあること、一般低所得世帯との均衡のみで生活保護基準を捉えていると絶対的な水準を割ってしまう懸念があることに注意を促しているところである。

3 生活保護基準引き下げが市民生活に及ぼす影響について
  いうまでもなく、生活保護制度は、憲法25条が保障する「健康で文化的な最低限度の生活」を保障するものであり、その基準は、最低限度の生活を保障するものでなければならない。それだけでなく、生活保護基準は、最低賃金、就学援助の給付対象基準、介護保険の保険料・利用料や障害者総合支援法による利用料の減額基準、地方税の非課税基準等の労働・教育・福祉・税制などの多様な施策の適用基準と連動している。生活保護基準の引下げは、生活保護利用世帯の生存権を直接脅かすだけでなく、生活保護を利用していない市民全般にも多大な影響を及ぼすのである。
 厚生労働省は、当初の大幅削減案から、減額幅を最大5%にとどめ、段階的に減額するという修正を行い、大幅削減に対する対応を行ったかのように見える。しかし、5%であっても大きな削減であるし、削減の根拠に合理性がない以上、削減幅を減らしたから許されるというものではない。更なる生活保護基準の引下げそのものが、2004年(平成16年)からの老齢加算の段階的廃止、2013年(平成25年)からの生活扶助基準の削減(平均6.5%、最大10%)、2015年(平成27年)からの住宅扶助基準・冬季加算の削減等の度重なる生活保護基準の引下げによって既に「健康で文化的な生活」を維持し得ていない生活保護利用者を更に追い詰め、市民生活全般の地盤沈下をもたらすものであり、容認できない。

 よって、当会は、厚生労働省の生活保護基準の引下げの方針を撤回し、一切の生活保護基準の引下げを行わないよう強く求めるものである。
以上