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広島県における国旗国歌強制に対する最高裁判決に関する会長声明

2011年07月20日
広島弁護士会
会長 水中誠三



本年6月21日,最高裁第三小法廷は,広島県立学校の教職員らが,卒業式又は入学式において国旗掲揚の下で国歌斉唱の際に起立することを命ずる旨の校長の職務命令に従わなかったことを理由に戒告処分を受けたため,同戒告処分の取消しを求めた事案に対し,上記職務命令は憲法19条に違反しないと判示した。

本判決は,本年5月30日の最高裁第二小法廷判決,6月6日の同第一小法廷判決,及び6月14日の同第三小法廷判決と同じく,上記職務命令は思想・良心の自由の間接的な制約に過ぎないとし,国歌斉唱の際の起立行為は「慣例上の儀礼的な所作」であること,及び地方公務員の地位及びその職務の公共性との総合較量によって,制約の必要性及び合理性が認められるとする。

憲法19条は,戦前,特定の思想を反国家的なものとして弾圧するなど国民の精神を統制していたことの反省から生まれたものである。しかも,広島県は,第二次世界大戦の際,人類史上初めて原爆を投下されて多くの犠牲者を出したという特有の事情から,戦時中に国威発揚の象徴として用いられた「日の丸」や「君が代」に対して抵抗感を抱いている市民も少なからずあり,このため,「日の丸」や「君が代」の取り扱いについて十分なコンセンサスが得られているとは言い難い。本判決は,憲法19条の意義,及びこの広島県特有の事情に対する配慮がなされていない。「日の丸」や「君が代」に対して敬意を表明することに応じ難い者にとっては,上記起立行為は単なる「慣例上の儀礼的な所作」ではなく,「日の丸」や「君が代」に対して敬意を表明する行為そのものであって,同人の思想・良心の自由の核心を侵害するものである。
また,合憲性の判断においては,総合較量という基準が用いられているが,上記職務命令という国家権力と,思想・良心の自由という一国民の利益との較量では,必然的に国家権力の利益が優先される可能性は高く,そもそもこのような緩やかな基準を選択していること自体も問題である。思想・良心の自由は,内面的精神活動の自由の中でも最も根本的なものであるから,より厳格な基準で合憲性を判断すべきであった。
人権保障の最後の砦であるはずの最高裁判所が,精神的自由の重要性を全く軽視してしまっている。国旗や国歌をどのように思うかは,まさに内心の問題であって,職務命令によって強制的に従わせるものではなく,懲戒処分による不利益を与えてはならないものである。

なお,田原睦夫裁判官の反対意見において,「その不起立の理由など具体的事情の如何によっては,裁量権の濫用が問われる余地があるといえよう」と指摘しているように,本判決が起立行為の強制を無条件に容認したと見るべきではない。

当会は,広島県及び広島県教育委員会に対し,教職員に君が代斉唱の際の起立・斉唱を含め国旗・国歌を強制することのないよう強く要請する。

以上