声明・決議・意見書

会長声明2026.02.27

国選弁護制度の報酬の大幅な増額を求める会長声明

2026年(令和8年)2月26日

広島弁護士会 会長 藤川和俊

 

第1 声明の趣旨

当会は、被疑者・被告人の更なる権利擁護と公正な刑事司法制度実現のため、国会、法務省、財務省等に対し、国選弁護報酬の大幅な増額を求める。

 

第2 声明の理由

1 国選弁護報酬は、法テラスの発足以来約20年間にわたり、実質的にほぼ据え置かれている。一方で、近時の急激な物価高騰に伴い、消費者物価指数は上昇し、法律事務所の維持に必要な人件費、光熱費、交通費等の経費は著しく増大している。医療介護等他の業界団体でも、物価上昇を踏まえた報酬引き上げを求める運動もなされている。

弁護士といえども、事務所を経営し、事務職員を雇用し、生活を維持しなければならない一職業人である。現状の低廉な報酬水準は、事務所経営を圧迫し、適正な刑事弁護活動を行うために必要な対価を大きく下回っている。

特に、広島弁護士会管内の支部地域(福山、呉、尾道、三次等)においては、広域な地域性や移動時間等の負担がかかる中で、会員の献身的な努力により国選弁護活動が支えられている現状がある。今後、刑事弁護の質の維持・向上を図り、将来にわたって地域司法を安定的に支え続けるためには、過度な経済的負担を解消し、次代を担う若手弁護士らがより意欲を持って取り組める環境を整備することが急務である。

2 袴田事件の再審無罪判決は記憶に新しく、福井女子中学生殺人事件、プレサンス事件、大川原化工機事件など、冤罪事件は後を絶たない。刑事弁護活動に対しては、罪に問われるような者のために国家予算を費やすべきではないといった批判的な意見も散見される。

しかし、十分な弁護活動が行えなくなれば、国家権力による行きすぎた捜査活動を監視することができなくなり、前述した冤罪事件のように、無実の一般市民が不当な身体拘束や刑事罰にさらされる危険が生じる。

すなわち、刑事弁護制度は、被疑者被告人のためだけにあるものではなく、善良な一般市民が誤って国家権力による人権侵害を受けないための社会全体のインフラである。

3 現在、国選弁護業務のための予算は年間160億円前後で推移しているが、これは100兆円規模の国家予算のわずか0.01%強に過ぎず、平成22年の予算に占める割合と比較しても低下している。人権保障の基盤強化のためにこの予算を抜本的に増額することは、国家財政の規模に照らしても十分に可能であり、かつ必要不可欠な投資である。

4 よって、当会は、被疑者・被告人の更なる権利擁護のみならず、一般市民の誰もが安心して暮らせる公正な刑事司法制度を実現するため、国選弁護報酬の大幅な増額を強く求めるものである。

以上