声明・決議・意見書

会長声明2023.12.13

当会会員を懲戒の手続に付したことに関する会長談話

2023年(令和5年)12月13日

広島弁護士会  会長 坂 下 宗 生

 

当会は、令和5年12月13日、弁護士法58条2項に基づき、当会所属の加島康介会員を懲戒の手続に付し、綱紀委員会による事案の調査を求めました。

本件は、同会員が、令和5年2月下旬、警視庁原宿警察署に窃盗の被疑事実で勾留され、同勾留につき接見等禁止決定のあった被疑者に対し、弁護人となろうとする者として接見した際、携帯電話機をビデオ通話機能で通話状態にし、これを被疑者に示して、罪証隠滅行為等を行うおそれがある者らとビデオ通話で直接通話させたとされる事案です。

被疑者等と弁護人等との間の秘密接見交通権は、身体拘束を受けた被疑者等が弁護人等と相談し、その助言を受けるなど弁護人等から援助を受ける機会を確保するために認められた権利であり、憲法34条に由来する重要なものです。

被疑者等と弁護人等との間の秘密接見交通権は、弁護士が、基本的人権の擁護及び社会正義の実現という使命に基づいて誠実に職務の執行を行うという高度の倫理性及び専門性を備えており、秘密接見交通権を濫用することはないという国民の信頼に基づいて保障されているものです。

それにもかかわらず、同会員が勾留中の被疑者と接見した際に罪証隠滅行為等を行うおそれがある者らとビデオ通話で直接通話させたのであれば、秘密接見交通権を濫用して弁護士に対する国民の信頼を損なうものといわざるを得ず、当会としては、到底、これを看過することはできません。

よって、弁護士としての品位を失うべき行為があったものとして、同会員を懲戒の手続に付し、綱紀委員会による事案の調査を求めた次第です。

刑事手続上の適正手続のより完全な実現を目指すべく、弁護士や弁護士会が日々活動している状況において、このような事態が生じたことは、大変遺憾です。

当会は、本件を契機として、会員の綱紀について、これまで以上に注意を促す所存です。

 

以上