声明・決議・意見書

会長声明2026.06.09

最低賃金額の引上げ及び地域間格差の是正を求める会長声明

                                                                              2026年(令和8年)6月9日

広島弁護士会 会長 古河 真人

第1 声明の趣旨

1 当会は、中央最低賃金審議会に対し、①2026年度(令和8年度)地域別最低賃金額改定の目安に関する答申において目安を引き上げることによって地域別最低賃金額の引上げを促すこと、及び②地域間格差を是正するために全国一律最低賃金の実施に向けた提言を行うことを求める。

2 当会は、広島地方最低賃金審議会に対し、主体的に2026年度(令和8年度)地域別最低賃金額の引上げを図ることを求める。

 

第2 声明の理由

1 中央最低賃金審議会は、近々、厚生労働大臣に対し、地域別最低賃金額改定の目安に関する答申をする予定である。その後、中央最低賃金審議会の答申を受けて、各都道府県地方最低賃金審議会において調査・審議を行い、賃金額改定の答申がされ、これをふまえて、各都道府県労働局長が地域別最低賃金額を決定することとなる。

2 2025年(令和7年)7月、中央最低賃金審議会は、全国加重平均63円の引上げ(全国加重平均1118円)を答申した。これを受けて、広島県においても、2025年度(令和7年度)には65円の引上げがなされ、その結果、最低賃金額は1085円とされた。

もっとも、増額された上記金額によっても、1日8時間、週40時間働いた場合でも、月収約19万円、年収で約228万円にしかならない。

他方で、総務省の消費者物価指数は、2020年(令和2年)を100とすると2026年(令和8年)3月には112.7と12.7パーセントも上昇しており、近年の国際的な原材料価格の高騰や円安の影響等により、消費者物価は大幅な上昇が継続している。このため、厚生労働省発表にかかる2025年(令和7年)分毎月勤労統計調査によれば、実質賃金指数は前年比マイナス1.3%と4年連続のマイナスとなっている。なお、こうした物価の上昇傾向は、昨今の中東情勢の影響もあり、今後もその傾向に一層の拍車がかかっていくと見込まれる。

このように、給与の上昇が物価高に追いついていない状態が続いており、特に低所得者層ほど消費者物価の上昇の影響を受けやすいことに鑑みれば、上記の最低賃金額では、労働者が賃金だけで人間らしい生活を持続的に営むことはできず、すべての労働者を低廉な賃金から保護する安全網(セーフティネット)としての最低賃金制度の目的を果たしているとは言い難い。したがって、最低賃金額をさらに引き上げ、最低賃金制度を真に実効的に機能させることが必要不可欠である。

この点、石破茂前内閣総理大臣は、「2020年代に全国平均1500円という高い目標に向かってたゆまぬ努力を続ける」と表明していたが、後任の高市早苗内閣総理大臣は、賃上げに向けた環境整備を加速させる方針を示してはいるものの、その内容は具体性に乏しいといわざるを得ない。

前述のような近年の消費者物価の大幅な上昇傾向に鑑みれば、大幅な最低賃金額の引上げは急務であり、迅速に実現されなければならない。

3 また、2025年度(令和7年度)の最低賃金額の引上げ額は全国加重平均66円であり、この結果、全ての都道府県で最低賃金額が1000円を超えるようになったが、引上げ後も都市部ほど最低賃金額が高いことに未だ変わりはなく、労働者が高い賃金を求めて都市部に流出し、地方において労働力の不足が生じ、地域経済にとってマイナス要因となっている状況にあることも否定できない。

そのため、広島県において最低賃金額をさらに引き上げることや、全国一律最低賃金制度の実施によって地域間の賃金格差を解消することは、地域経済の活性化の観点からも必要ということができる。

4 一方、最低賃金額の大幅な引上げは、賃金を支給する事業者、特に中小企業・小規模事業者の経営に影響を与える可能性が高いことから、最低賃金額の引上げにあたっては、各種助成金・補助金の支給や社会保険料の事業者負担分の減免等、これら中小企業・小規模事業者へのさらなる支援及びその拡充も必要である。また、大企業に比して交渉力が弱い中小企業・小規模事業者が適正な代金の支払を得て、賃金の引上げに充てることが可能となるように、独占禁止法や中小受託取引適正化法の積極的な運用等が求められることから、こうした取り組みへの働きかけも付言されるのが相当である。

5 以上の次第で、当会は、中小企業・小規模事業者への支援策に注意を払いつつ、労働者の生活の安定、労働力の質的向上及び国民経済の健全な発展への寄与という最低賃金法の目的を達するため、改めて、中央最低賃金審議会に対し、今回の答申において目安を引き上げることによって地域別最低賃金額の引上げを促すこと及び地域間格差を是正するために全国一律最低賃金制度の実施に向けた提言を行うことを求めるとともに、広島地方最低賃金審議会に対し、主体的に地域別最低賃金額の引上げを図ることを求める。

以上