声明・決議・意見書

会長声明2009.04.08

裁判員裁判における国選弁護人を原則複数とすることを求める会長声明

広島弁護士会
会長  山下哲夫

1  当会では、2009年(平成21年)5月21日から施行される裁判員制度について、全ての会員がその刑事弁護活動を積極的に担っていく予定であるが、裁判員裁判における国選弁護人を原則として複数とすることを強く求めるものである。
2  裁判員裁判においては、公判手続に先立って行われる公判前整理手続において、証拠開示請求や予定主張明示などの諸手続を短期間のうちに対応しなければならず、さらに公判手続では連日的開廷が行われ、何人もの証人尋問等証拠調べが集中的に実施され、最終弁論も証拠調べ終了後直ちに行わなければならない。そのため、弁護人は、短期間に集中して精力的な弁護活動を強いられ、従前とは比較にならない非常に重い負担を負うことになる。
すなわち、裁判員裁判を担当する弁護人は、その公判期間中はもちろん、その日の公判終了後も被告人との接見・打合せなど翌日の公判に備えて訴訟活動の準備に追われ、そのために他の業務を行うことが極めて困難になることも想定される。具体的には、いわゆる否認事件であれば、3日以上に及ぶ連日的開廷期日が必要な事件となり、また、いわゆる自白事件においても従前の量刑基準が当然の前提となるわけではないことなどから、これまでの弁護活動自体を一から再検討することを迫られている。
このように、弁護人が多様な重い負担を背負うことは、ひいては被告人にとって十分な防御活動ができなくなる危険があり、また訴訟の円滑な進行にも支障をきたすことになりかねない。
したがって、これまで比較的容易と考えられていた自白事件においても、選任される被告人国選弁護人は最低2名を原則とすべきである。また、3日以上の連日的開廷が予想される否認事件においては、被告人国選弁護人の人数は3名以上とされるべきである。
3  また、迅速かつ充実した裁判員裁判を実現するためには、弁護人が早期に事実関係を把握して被告人との信頼関係を築くことが不可欠であるから、できるだけ早い段階での弁護人選任が望ましいことは言うまでもないので、被疑者段階から公判を担当することになる複数の弁護人が選任されることが望ましい。
刑事訴訟法37条の5では、被疑者段階でも裁判官の裁量により、法定刑が死刑または無期懲役または禁固事件では1名追加しての被疑者国選弁護人の選任が可能とされているところ、裁判員裁判対象事件の多くはこれに該当するのであるから,積極的に被疑者国選弁護人の複数選任が実現されるべきである。

以上