声明・決議・意見書

会長声明2014.04.01

行政書士法改正に反対する会長声明

広島弁護士会
会長 小野裕伸

日本行政書士会連合会は,行政書士法を改正して,「行政書士が作成することのできる官公署に提出する書類に係る許認可等に関する審査請求,異議申立て,再審査請求等行政庁に対する不服申立てについて代理すること」を行政書士の業務範囲とすることを求め,そのための運動を推進してきており,それを受けて行政書士法改正法案が議員立法として国会に提出される可能性がある。

しかし,既に,日本弁護士連合会が2012年(平成24年)8月10日に会長声明で反対の立場を表明したのを始め,複数の単位弁護士会が会長声明で反対の立場を表明しているように,上記業務を行政書士の業務範囲に加えることは国民の権利利益の擁護を危うくするおそれがある。
よって,当会もここに反対の意見を表明する。
反対の理由は,以下のとおりである。

第1に,行政書士の主たる業務は,行政手続の円滑な実施に寄与することを主目的とした,行政庁に対する各種許認可関係の書類作成・提出であり,その業務ないし職務の性質上,行政庁の違法・不当な行政処分を是正する行政不服申立制度とは,本質的に相容れない。
第2に,都道府県知事による監督を受ける行政書士が,国民と行政庁が鋭く対立する行政不服申立ての代理をすることは,国民の権利利益の実現を危うくするおそれがある。
第3に,行政庁の違法・不当な行政処分を是正し国民の権利利益を擁護するはずの行政不服申立制度において,行政庁と厳しく対峙し国民の側に立ってその権利利益擁護のために最善を尽くすことのできないおそれある代理人が許容されることにより,国民の権利利益が全うされないという事態は,厳に避けなければならない。
第4に,行政不服申立ての代理人を務めるに当たっては,行政訴訟の提起や同訴訟段階での結論も十分視野に入れる必要があるところ,その点において行政書士の能力担保は十分とはいえない。
第5に,行政書士について定められている倫理綱領は,その内容において,当事者の利害や利益が鋭く対立する紛争事件の取扱いを前提にする弁護士倫理と異なっており,行政書士において紛争事件を取り扱うだけの職業倫理が確立しているとはいえない。
第6に,行政による違法・不当な処分から社会的弱者を救済する実績を上げるなど,弁護士は既に行政手続業務にも代理人として相当関与しているところ,弁護士人口が毎年相当数増加していくことが見込まれ,行政不服申立ての分野にも弁護士がより一層関与していくことが確実に予想される中,行政書士法を改正して行政書士の業務範囲を拡大する必要性に欠ける。
第7に,日本行政書士会連合会は,行政不服申立の代理に合わせて,ADR手続における代理権の付与を求めているが,当事者の利益が激しく対立するADR手続の代理人は,不成立となった場合の訴訟の見通しなども視野に入れて交渉することが要求されることから,法律の体系を熟知し,あらゆる手続に関与できる弁護士が代理人になるべきであり,行政書士に対し,ADR手続の代理権を付与することに強く反対する。

以上