声明・決議・意見書

会長声明2015.07.14

最低賃金額の大幅な引き上げを求める会長声明

広島弁護士会
会長 木村 豊

第1 意見の趣旨
中央最低賃金審議会には,平成27年度地方最低賃金額改定の目安についての答申において,目安を大幅に引き上げることによって地域別最低賃金の大幅な引上げを促すことを,また,地方最低賃金審議会には,主体的に最低賃金額の大幅な引上げを図ることを求める。
第2 意見の理由
中央最低賃金審議会は,近々,厚生労働大臣に対し,地方最低賃金額改定の目安についての答申を行う予定である。
地域別最低賃金は,中央最低賃金審議会における最低賃金改定の論議を受けて行われる各都道府県の地方最低賃金審議会での審議の結果を踏まえて,各都道府県の労働局長において定めるところ,近年では,非正規労働者の数が全労働者の4割近くを占めるまでに増加し,その結果,家計を支える役割を担う非正規労働者も多数現れ,いわゆるワーキングプアと呼ばれる貧困層が広がり続けている。このような今日の現状を踏まえれば,最低賃金制度を「すべての労働者を不当に低い賃金から保護する安全網」(セーフティーネット)として真に実効的に機能させることが必要不可欠であり,最低賃金で働いても人間らしい生活を持続的に営むことができるように,最低賃金額を引き上げることが喫緊の課題というべきである。
この点,現在の広島県の地域別最低賃金は,1時間750円(2014〔平成26〕年10月1日効力発生)に留まっている。その対前年度上昇率は2.32%であり,前々年度の対前年度上昇率が1.95%であったことに比すれば前進しているとはいえ,近時の消費税の増税や物価の上昇傾向(消費者物価指数は,2013〔平成25〕年に比して,2014年  〔平成26年〕は2.7%上昇し,その後も,2015〔平成27〕年5月まで24か月連続で上昇している。)に鑑みれば,引き上げ幅としては,なおも小幅に過ぎると言わざるを得ない。
最低賃金の引き上げの効果としては,労働者の離職率の低減化,新規採用・訓練のコストの削減,生産性の向上,賃金が消費に回ることによる経済の活性化など様々な社会的メリットも指摘されており,政府も,2010(平成22)年6月に閣議決定した「新成長戦略」において「全国最低800円,全国平均(全国加重平均)1000円」の最低賃金額の実現を目標に掲げているところである。
したがって,当会は,地域経済の健全な発展と労働者の健康で文化的な生活の確保のために,中央最低賃金審議会には,今回の答申において,目安を大幅に引き上げることによって地域別最低賃金の大幅な引上げを促すことを,また,地方最低賃金審議会には,主体的に最低賃金額の大幅な引上げを図ることを求める。

以上