声明・決議・意見書

会長声明2017.09.19

銀行等による過剰貸付の防止を求める会長声明

広島弁護士会
会長 下中奈美

1 返済しきれないほどの借金を抱えてしまういわゆる「多重債務問題」が、深刻な社会問題となったことから、「総量規制」として、借入残高が年収の3分の1を超える場合には新規の借入ができなくなることなどを定める貸金業法等の改正が行われた(平成18年12月改正法成立、平成22年6月完全施行)。
上記の法改正から、これまでの間に、5社以上無担保無保証借入の残高がある人の数は171万人(平成19年3月末)から12万人(平成28年3月末)へと、また自然人自己破産の新受件数は16万5932件(平成18年)から6万3844件(平成27年)へと、いずれも大幅に減少している。
2 ところで、近時、上記の法改正による総量規制の対象外とされた銀行等による消費者向け貸付が、急激に増えている。たとえば、国内銀行の個人向け貸出しにおいて、住宅資金以外の「その他ローン」のうち、「カードローン等残高」は、3兆5442億円(平成25年3月)から5兆1227億円(平成28年3月)と、短期間で急増した。これら銀行等による消費者向け貸付は貸金業者が保証会社となることが多くある。
また、「銀行のカードローンは改正貸金業法による総量規制の対象外です」「最大500万円所得証明書一切不要」などのように、貸金業法による総量規制の対象外であることを強調したり、借入の際に収入証明が不要であることを強調した宣伝・広告がされていることがある。
そして、実例として、銀行が債務者の収入の2倍を超える貸付をした事例、無収入の者に貸付をした事例などが見られる。併せて、自然人自己破産の新受件数は、貸金業法改正以来一貫して減少していたものが、平成27年頃から下げ止まりの傾向となっている。
平成29年8月1日に日本弁護士連合会及び各地の弁護士会が実施した全国一斉銀行カードローンホットラインにおいても、342件の相談が寄せられた。
3 貸金業者が、総量規制により、自らは貸付を行うことができないような顧客に対し、銀行等が、貸金業者による保証の下で、過剰な貸付を実行しているとすれば、改正貸金業法の趣旨を没却するものといわざるを得ない。
4 改正貸金業法13条の2においては、一部の例外を除き、借入残高が年収の3分の1を超えることとなる貸付(個人過剰貸付契約。同条2項)を原則として禁止している。これは、同条1項の「返済能力を超える貸付け」に当たるため、これを禁止する趣旨である。
なお年収の3分の1を超える借入が例外的に認められる場合でも、返済期間内に完済することが合理的に見込まれること(加えて、健全な資金ニーズと認められること)を要する。
5 銀行等による消費者向け貸付利率は貸金業者による貸付利率と大きく異なるものではなく、このような改正法の趣旨からすれば、総量規制の対象外とされた銀行等の貸付についても、借入残高が年収の3分の1を超えることとなるような貸付の契約を締結することは、例外的な事情が認められない限り、顧客の返済能力を超える貸付に当たるというべきである。
6 金融庁は、「主要行等向けの総合的な監督指針」Ⅲ-6-3「消費者向け貸付けを行う際の留意事項」及び「中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針」Ⅱ-7「消費者向け貸付けを行う際の留意点」において、銀行には改正貸金業法の適用はないながらも、銀行も改正貸金業法の趣旨を踏まえて、過剰な貸付とならない審査体制構築を求めている。
ところが実際には、上記の通り、顧客の返済能力を超える貸付がなされている。
7 この点について、一般社団法人全国銀行協会は、本年3月16日、銀行による消費者向け貸付について改正貸金業法の趣旨をふまえた広告等の実施及び審査態勢等の整備をより一層徹底するという見地から、「銀行による消費者向け貸付に係る申し合せ」(以下「本申し合せ」という。)を行ったことを公表した。
しかし、本申し合せの内容は抽象的である上に、あくまでも「申し合せ」にすぎず、対応については各銀行等に委ねられており、実効性を担保する制度も設けられていないことからすると、過剰貸付抑制のための具体的かつ客観的な基準としての効果は期待できない。
8 よって、少なくとも銀行が消費者金融会社による保証を付した消費者向け貸付を行う場合について、国は、法改正によって、原則として借入残高が年収の3分の1を超える場合には過剰貸付に当たる旨の基準を明記すべきであるし、銀行等は、このような基準における過剰貸付を行わないよう、顧客の実態を踏まえた適切な審査態勢を構築すべきである。

以上