声明・決議・意見書

会長声明2006.09.25

志布志事件に関する会長声明

広島弁護士会
会長  大本和則

報道によると,鹿児島県での2003年鹿児島県議会議員選挙に関する公職選挙法違反刑事被告事件(いわゆる「志布志事件」)において,任意性に争いがある被告人供述調書の多くを,裁判所が任意性ありとして,証拠採用の決定をなしたとのことである。
当会は,当該事件の裁判所による証拠採否の当否について直接意見を述べるべき立場にはないが,当該事件に関しては,検察官により弁護人と被疑者との接見内容の秘密性が侵害されたとして国家賠償請求事件(いわゆる「鹿児島国賠事件」)が提起されているところであり,当会会員の多くが,これらの事件への高い関心を有している状況である。
そもそも,これらのような紛争が生じ主張が鋭く対立するのは,取調べ状況が適切に可視化されておらず,弁護人と被疑者等との接見の秘密性についての捜査官の理解が十分でないなどの事情が存するからである。
供述調書の任意性の判断に影響する事情,すなわち捜査官による暴行,脅迫,偽計等の行為がなされたか否か等について適正に判断し刑事手続を適正化するためには,検察庁が試行的に実施を開始した検察官の恣意的裁量による一部分の録音・録画では到底不十分であり,取調べ状況全過程の録音・録画による完全な可視化が必要である。
そこで,当会としては,今後供述調書の任意性を適正に判断するなど刑事手続を適正化していくためにも,前記志布志事件,鹿児島国賠事件の弁護団の活動に敬意を表するとともに,取調べの可視化についての適正な措置と,接見の秘密性についての正当な理解を求める不断の努力を続ける決意を表明するものである。

以上