声明・決議・意見書

意見書2026.07.13

市区町村による自衛隊への個人情報提供に対する意見書 

広島弁護士会 会長 古河 真人

第1 意見の趣旨
1 当会は、広島県内の各市町に対し、次の通り求める。
(1) 市町が保有する個人情報を外部に提供することの可否を判断する場合には、憲法第13条に基づき自己情報コントロール権が保障されることを念頭に、地方自治の本旨に基づき主体的に法令の要件該当性及び妥当性を慎重に判断すること
(2) 住民基本台帳法(以下「住基法」という。)第11条第1項の「法令で定める事務の遂行のために必要である場合」に該当するとして、自衛隊に対し住民基本台帳の一部の写しの閲覧を許諾している場合は、その運用を見直し、閲覧を許諾しない運用とすること
(3) 自衛隊への募集対象者の個人情報の提供に関し、自衛隊法第97条第1項及び同法施行令第120条が個人情報の保護に関する法律(以下「個人情報保護法」という。)第69条第1項の「法令に基づく場合」に該当することとして個人情報の提供を行っている場合は、その運用を見直し、提供しない運用とすること
(4) 仮に自衛隊に対して個人情報を提供する場合には、対象者から事前同意を取得すること
2 当会は、国に対し、自衛隊法第97条第1項及び同法施行令第120条が、個人情報保護法第69条第1項の「法令に基づく場合」に該当し、これらの法令を根拠として市区町村が自衛隊に対して募集対象者の個人情報を提供できるとの見解を見直し、仮に市区町村が自衛隊に対して個人情報を提供する場合には対象者の事前同意を取得することが必要であるとの見解を採用すること、併せて、市区町村が自らの責任において個人情報保護の重要性を十分考慮した上で、その提供の適否を判断するにあたって、市区町村による自主的な判断を尊重することを求める。

第2 意見の理由
1 問題状況の整理
近年、市区町村による自衛隊への自衛官等募集対象者の個人情報の提供が問題視されている。政府によれば、2013年度(平成25年度)には自衛隊に対して募集対象者情報(氏名、住所、生年月日等)を電子データ又は紙媒体で提供した市区町村はおよそ全体の3分の1だったが、報道では2024年度(令和6年度)に電子データ又は紙媒体で提供した市区町村は全体の3分の2の1152(全国の66%)に上ったとされている。
このような状況の背景には、2020年(令和2年)12月18日の政府による閣議決定が影響している。同日、政府は、閣議で、「自衛官又は自衛官候補生の募集に関し必要な資料の提出を防衛大臣から求められた場合(自衛隊法第97条第1項及び同法施行令第120条)については、市区町村長が住民基本台帳の一部の写しを提出することが可能であることを明確化し、地方公共団体に令和2年度中に通知する。」と決定した。その後、2021年(令和3年)2月5日付の防衛省人事教育局人材育成課長・総務省自治行政局住民制度課長による「自衛官又は自衛官候補生の募集事務に関する資料の提出について(通知)」により、上記閣議決定の考え方が改めて確認された。
しかしながら、個人情報保護の重要性がより高まっている昨今において、対象者に何らの承諾も得ることなく個人情報を提供することは慎重になされるべきであることに加えて、政府による上記見解は適切な法解釈とはいいがたく問題がある。
そこで、当会は、広島県内の各市町における自衛隊への対象者の個人情報の提供情況を把握するため、全23市町に対し、アンケートを実施した。以下、当該アンケート結果をまとめ、個人情報の提供の問題点を指摘する。
2 広島県内の市町に対するアンケート調査の結果
(1) アンケートの概要
本件アンケートは、2025年(令和7年)8月に広島県内の23市町に送付し、同年9月~2026年(令和8年)1月にかけて、21市町から回答が返送された。
主な項目は、以下のとおりである。
① 自衛隊への住民の個人情報の提供の有無及び提供している情報・提供方法(問1~問6)
② 提供に当たって対象者の同意の有無(問7~問9)
③ 除外申請制度の有無(問10~問11)
④ 個人情報提供の根拠法令等(問12~問13)
(2) アンケートの結果
回答のあった市町は、いずれも何かしらの方法で自衛隊に対して対象者の個人情報を提供していた。提供の方法としては、①住民基本台帳の閲覧のみが14、②紙面による提供を行っているのが6、③15歳は住民基本台帳の閲覧のみ、18歳は紙面での提供と両方を行っているのが1であった。電子データで提供を行っていると回答した市町はなかった(問5)。提供の対象としている住民は、満18歳が最も多かったものの、17歳、16歳、15歳、14歳の情報を提供している市町もあった。
また、個人情報の提供に当たって事前同意を取得している市町はなく、除外申請制度を設けている市町も5にとどまった。紙媒体での提供を行っている(すなわち、住基法上の閲覧を超えて提供を行っている)7のうち、除外申請制度を設けているのは3のみで、その案内もホームページ、専用アプリ、広報誌での案内に留まり、個別の書面での通知や学校を通じての通知等は行われていない(問10)。
除外申請制度を設けていない16市町のうち、これまで提供を拒む旨の申出がないと回答した市町が12に上り、除外の申出があっても提供していると回答した市町が5であった(問9)。本人からの除外の申出にもかかわらず提供している市町のうち、1市町は、紙媒体で提供している市町であった。
自衛隊に個人情報を提供する根拠としては、住基法第11条第1項のみを挙げた市町(いずれも住民基本台帳の閲覧のみ)が5、自衛隊法第97条第1項及び同施行令第120条を根拠として挙げている市町が10、個人情報保護法を根拠に挙げている市町が4、根拠法令の明示がなかった市町が2であった。なお、紙媒体での提供を行っているにもかかわらず、住基法第11条第1項を根拠に挙げている市町もあった。明確な根拠法令の記載がなかった市町の1つは、「個人情報保護委員会より「法令に基づく場合」に該当するとの見解が示されているため」との回答であった。
3 個人情報提供の可否
(1) 住基4情報の要保護性
上記のとおり、広島県内の各市町において、自衛隊に対し、住民 の氏名、生年月日、性別、住所の情報(以下「住基4情報」という。)などの提供が行われている。
判例上、憲法第13条に基づき「個人の私生活上の自由の一つとして、何人も、個人に関する情報をみだりに第三者に開示又は公表されない自由を有する」とされている(最判平成20年3月6日・住基ネット違憲訴訟最高裁判決)。当該判例は、住基4情報につき、「人が社会生活を営む上で一定の範囲の他者には当然開示されることが予定されている個人識別情報であり、(中略)個人の内面に関わるような秘匿性の高い情報とはいえない」として、その要保護性は高くないと判断している。
しかし、上記最高裁判決は、プライバシー権について「みだりに情報を開示されない自由」として理解する伝統的なプライバシー権の理解に留まっており、個人情報の収集・管理・利用・提供については情報主体が主体的に把握し、その可否を判断することができる権利(自己情報コントロール権・情報自己決定権)として認められるべきであるとの批判もなされている。高度に情報化が進行した現代においては、インターネットによって大量の情報が瞬時に共有され、AIによるプロファイリング等によって容易に個人に関する情報を収集・分析することが可能となっており、個人情報の要保護性は飛躍的に高まっている。このような現代社会においては、個人が自らの情報をコントロールする権利としても憲法上保障されているというべきである。住基4情報についても、従前、何人でも住民基本台帳の閲覧を請求できるとされていたが、2006年(平成18年)11月に改正された住基法により、原則非公開とされている。これは、社会の変容に伴い個人情報保護に関する国民の意識が高まっていることを背景にしたものであり、その要保護性は高いものというべきである。
以上のとおり、憲法上も保護される個人情報である住基4情報について、市区町村が本人の同意なく、第三者に提供することは、憲法上保障されるプライバシー権ないし自己情報コントロール権を制約するものであるから、住基4情報の提供が許されるか否かを検討するにあたっては、プライバシー権ないし自己情報コントロール権の持つ要保護性に鑑みて慎重に判断されなければならない。
そこで、以下、上記の様な観点から、政府および市区町村が自衛隊への個人情報提供が可能であると判断している根拠が適切といえるか否かについて検討する。
(2) 個人情報の提供の根拠
ア 政府の見解
2021年(令和3年)2月5日付の防衛省人事教育局人材育成 課長・総務省自治行政局住民制度課長による「自衛官又は自衛官候補生の募集事務に関する資料の提出について(通知)」は、2020年(令和2年)12月18日閣議決定「令和2年の地方からの提案等に関する対応方針」に基づき、下記のとおり述べている。なお、同通知は、地方自治法(昭和22年法律第67号)第245条の4第1項に基づく技術的助言であるとされている。

1 自衛官及び自衛官候補生の募集に関し必要となる情報 (氏名、住所、生年月日及び性別をいう。)に関する資料の提出は、自衛隊法第97条第1項に基づく市区町村の長の行う自衛官及び自衛官候補生の募集に関する事務として自衛隊法施行令第120条の規定に基づき、防衛大臣が市区町村の長に対し求めることができること。
2 上記の規定の募集に関し必要な資料として、住民基本台 帳の一部の写しを用いることについて、住民基本台帳法上、特段の問題を生ずるものではないこと。
以上
また、個人情報保護委員会も、自衛隊法施行令第120条に基 づく募集対象者の個人情報の提供は、個人情報保護法第69条第1項の「法令に基づく場合」に該当するとの見解を示している。
自衛隊法第97条第1項は、「都道府県知事及び市町村長は、政令で定めるところにより、自衛官及び自衛官候補生の募集に関する事務の一部を行う。」と定め、自衛隊法施行令第120条は「防衛大臣は、自衛官又は自衛官候補生の募集に関し必要があると認めるときは、都道府県知事又は市町村長に対し、必要な報告又は資料の提出を求めることができる。」と定めている。
政府は、自衛隊法第97条第1項の定める自衛官等の募集事務に際して募集対象者の住基4情報を閲覧することは、「法令で定める事務の遂行のために必要である場合」(住基法第11条1項)に該当することを前提としたうえで、自衛隊法施行令第120条の「必要な報告又は資料」に住基4情報を記載した書面ないし電子データが含まれ、同条に基づき個人情報を提供することは、個人情報保護法第69条1項の「法令に基づく場合」に該当するため許容されると解していると思われる。
イ 広島県内各市町の見解
アンケート結果のとおり、広島県内の各市町は、住基4情報の 自衛隊への提供(若しくは閲覧の許諾)の根拠として、住基法第11条第1項、自衛隊法第97条第1項、同法施行令第120条、個人情報保護法第69条第1項を挙げている。すなわち、上記政府の見解と同様、自衛隊法第97条第1項、同法施行令第120条が、住基法第11条第1項の「法令」に該当し、かつその「事務の遂行のために必要である場合」に該当すると判断し、また、自衛隊法第97条第1項、同法施行令第120条が、個人情報保護法第69条第1項の「法令」に該当し、これに基づき提供が許容されると解していると考えられる。
ウ 小括
上記のとおり、政府及び広島県内の各市町は、自衛隊へ住基4 情報を提供する根拠について、住基法第11条第1項、自衛隊法第97条第1項、同法施行令第120条、個人情報保護法第69条第1項などの規定を挙げている。そこで、以下では、これらの各規定を根拠として自衛隊へ住基4情報を提供することの是非について検討する。
(3) 住基法第11条第1項に基づく閲覧の可否
住基法は、第11条第1項において、国又は地方公共団体の機関は、「法令で定める事務の遂行のために必要である場合」には、市町村長に対し、住基4情報に係る部分の写しを閲覧することを請求できるとしている。そのため、同項に基づき自衛隊に住基4情報を提供するには、「法令で定める事務の遂行のために必要である場合」に該当する必要がある。
上記のとおり、個人情報が第三者に提供されることは、基本的人権に含まれるプライバシー権(もしくは自己情報コントロール権、情報自己決定権等)との抵触が生じうるから、これが正当化されるだけの必要性と許容性について慎重に判断される必要がある。個人情報の持つ要保護性の高さに鑑みれば、住基法第11条第1項が「法令で定める事務の遂行のために必要である場合」と定めている以上、当該「法令」の制定に際して、少なくとも、国の機関等が個人情報の取得を行うことの合理性が議論され、これを憲法上正当化しうることが確認されていることが必要というべきである。すなわち、同項に定める「法令」に該当するというためには、当該「法令」自体に、個人情報の取得の権限が含まれている場合や、当該事務の遂行に当たって個人情報の取得が当然に想定されている場合(犯罪捜査など)をいうものと解される。
また、住基法第11条第1項が定めているのは、「閲覧」のみである。同法第30条の9が、国の機関等への本人確認情報の提供に関し具体的に規定していることを踏まえれば、紙媒体や電子媒体によって個人情報を提供することは、住基法第11条第1項を根拠に行うことはできないというべきである。
(4) 個人情報保護法に基づく第三者提供の可否
個人情報保護法上、「生存する個人に関する情報であって」、「当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの」は個人情報に該当すると整理されており(同法第2条第1項第1号)、住基4情報は、同法が保護する対象である「個人情報」に該当することは明らかである。
個人情報保護法は第61条第1項において、行政機関等が、個人情報を保有するにあたっては、その利用目的をできる限り特定しなければならないと定めた上で、同法第69条第1項において、「行政機関の長等は、法令に基づく場合を除き、利用目的以外の目的のために保有個人情報を自ら利用し、又は提供してはならない。」と規定している。
そこで、まず、住基法上の利用目的について検討すると、住基法上、住基4情報取得の目的に自衛隊への提供は含まれていない(住基法第1条)。したがって、市区町村が住基4情報を自衛隊に提供するためには、「法令に基づく場合」(個人情報保護法第69条第1項)又は同条第2項各号の要件を満たす場合でなければならない。
個人情報保護法第69条第1項に定める「法令に基づく場合」とは、「法令に基づく情報提供が義務づけられている場合のみならず、法令に情報提供の根拠規定が置かれている場合を広く含む。」とされている。ただし、同項が予定する「法令に基づく場合」とは、単なる所掌事務の定めでは足りず、根拠となる法令自体において、行政機関が情報提供を求めることができる根拠と言える程度の規定であることが必要である。これは、上記住基法に基づく閲覧の場合と同様、原則として提供が禁止される個人情報について、法令に基づき例外的に第三者提供を認めるものである以上、基本的人権の制約を正当化しうる程度の合理的な理由が必要であり、この点を含めて立法府で審議されたことが必要となるからである。
(5) 自衛隊法第97条第1項及び同法施行令第120条による個人情報の閲覧、ないし提供の可否
「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン (行政機関等編)」では、個人情報保護法第69条第1項の「法令に基づく場合」について、下記のとおり定められている。

「法令に基づく場合」とは、法令に基づく情報の利用又は提供 が義務付けられている場合のみならず、法令に情報の利用又は提供の根拠規定がおかれている場合も含むと解されるが、他方で、具体的な情報の利用又は提供に着目せず行政機関等の包括的な権能を定めている規定がある場合に当該規定のみに基づいて行う個人情報の取扱いは、「法令に基づく場合」には当たらない。例えば、行政機関等の設置の根拠となる法令において「所掌事務」等を定める条文に事務又は業務が列挙されていることのみでは、そのために行う個人情報の取扱いは、「法令に基づく場合」には当たらない。また、普通地方公共団体が「地域における事務」を担うことを定めている地方自治法第2条第2項のような、包括的な権能を定めている規定がある場合に当該規定のみに基づいて行う個人情報の取扱いも、「法令に基づく場合」には当たらない。
以上
原則として公開が禁止されている個人情報について、例外的に法令の根拠をもって提供が許されるためには、当該法令自体において、個人情報の提供という人権侵害を行うことの必要性、妥当性が検討されていることが必要である。上記ガイドラインは、これを前提に、所掌事務を定める条文に事務または業務が列挙されていることのみでは、個人情報提供の適否が検討されているとはいえず、個人情報の提供を許容する根拠法令には該当しないとしているのである。
これを自衛隊法第97条第1項においてみてみると、同項は「都道府県知事及び市町村長は、政令で定めるところにより、自衛官及び自衛官候補生の募集に関する事務の一部を行う。」としているのみであり、個人情報の提供については何ら定められていない。これは、上記ガイドラインが「法令に基づく場合」に該当しないと明記する「『所掌事務』等を定める条文に事務又は業務が列挙されていることのみ」である場合に該当する。
自衛隊法施行令第120条は、「防衛大臣は、自衛官又は自衛官候補生の募集に関し必要があると認めるときは、都道府県知事又は市町村長に対し、必要な報告又は資料の提出を求めることができる。」と定めているが、そもそもこれは法律ではなく、国会での審議を経たものではない。仮に同施行令第120条が個人情報保護法第69条第1項の「法令」に含まれるとしても、同条を根拠に個人情報の提供が許容されるというためには、「必要な報告又は資料の提出を求めること」に、「募集対象者の個人情報の提供を求めること」が含まれている必要がある。しかし、同条の文言上、市区町村が保有する個人情報の提供については何ら触れられていない。自衛隊法施行令第120条が制定されたのは1954年(昭和29年)であることも踏まえれば、この規定の制定に当たって、プライバシー権の考慮及びその制約に対する正当化の検討がされているとは考え難く、上記のような個人情報保護に対する社会意識の高まりに伴う個人情報保護の観点も考慮されているとはいえない。
これらの事情を踏まえれば、自衛隊法施行令第120条が定める「報告又は資料」には、募集対象者の個人情報の提供は含まれないと解するべきである。
以上のとおり、自衛隊法第97条第1項及び同法施行令第120条を根拠として、本人の同意なく自衛隊に対して住基4情報を提供されるというプライバシー権への制約を正当化する根拠とすることはできないのである。
4 除外制度を設けることは正当化の根拠にはならないこと
一部の市区町村は、除外申請制度を設け、自ら申告した住民については提供の対象外とする運用をしている。
しかし、除外申請制度自体の周知が不十分であり、そもそも利用がほとんどなされておらず、個人情報保護の観点からは不十分である。加えて、除外申請制度はそれ自体に大きな問題がある。
自衛隊について協力的なスタンスをとるか否かは個人の思想・心情や政治的な立場にも関連する問題であって、本来はこれらの心情や立場について外部に表明することを強いられるいわれはない。しかし、自衛隊への個人情報提供について除外申請を住民自らが行うということは、その心情の披歴を強制することにもつながりうる。このような制度は、憲法が定める思想良心の自由(憲法第19条)を侵害し得るものといえる。
したがって、除外申請制度を設けていることは、個人情報提供を正当化する同意取得に該当するとはいえず、明確な事前同意がない限りは、個人情報の提供は許されないというべきである。
5 地方自治の観点からの問題点
そもそも、市区町村が把握している住民の個人情報の管理は、自治事務であるから、各市区町村が自らの責任により、管理することが必要である。それにもかかわらず、上記のとおり、国が誤った解釈を公表し、各市区町村が無批判にこれに追従していることは、憲法が定める地方自治の本旨(憲法第92条)とも相容れない。市区町村は、自らの責任において、個人情報保護の重要性を十分考慮した上で、法令の解釈を行い、その提供の適否を判断すべきである。
6 結論
以上のとおり、自衛隊法第97条第1項及び同施行令第120条を根拠に、住基法第11条第1項の「法令で定める事務」としての住基台帳の閲覧を許諾すること、あるいは、同法令を根拠に個人情報保護法第69条第1項の「法令に基づく場合」に該当するとして住基4情報を提供することは許されないというべきである。また、除外申請制度を設けることは、個人情報保護法第69条第2項第1号の本人同意に該当するものとはいえない。したがって、市区町村による自衛隊への住民基本台帳の閲覧の許諾や個人情報の提供に法的根拠はなく、違法であるというべきである。
以上により、意見の趣旨のとおり、広島県内の各市町に対し、自衛隊への個人情報提供の運用を改め、個人情報保護の重要性を改めて確認し、地方自治の本旨に基づき、自らの責任において住民の個人情報を管理する意識をより強く持つことを求めるとともに、国に対し、令和3年2月5日付「自衛官又は自衛官候補生の募集事務に関する資料の提出について(通知)」を見直し、個人情報の提供については対象者の事前同意を必須とし、併せて、市区町村による自主的な判断を尊重することを求めるものである。
以上

<執行先>
総務省、防衛省、広島県内各市町、個人情報保護委員会
<参考送付先>
日弁連、各弁護士会連合会、各弁護士会、報道各社

以上