声明・決議・意見書

会長声明2014.04.21

武器輸出三原則を排斥した閣議決定の撤回を求める声明

広島弁護士会
会長 舩木孝和

1、安倍内閣は、4月1日、武器輸出三原則を全面的に見直して防衛装備品移転三原則を閣議決定した。
武器輸出三原則は、1967年(昭和42年)4月の佐藤総理大臣(当時)が国会答弁で政府の方針として武器輸出三原則を表明し、1976年(昭和51年)2月三木総理大臣が国会で答弁した政府統一見解として、武器輸出三原則対象地域以外の地域に対しても武器輸出を慎むとして(武器輸出三原則等)、事実上一切の武器の輸出を禁止してきた。さらに、1981年(昭和56年)3月衆議院と参議院において武器輸出三原則を決議して、ここに我が国の平和国家としての国是とされるにいたったものである。
このように、武器輸出三原則は、上記政府答弁、統一見解、及び国会決議がなされたとおり、憲法の原則である平和主義国家としての我が国の立場を明確にしたものであった。
2、ところが、防衛装備品移転三原則によれば、武器輸出が禁止される対象国は極めて例外的であり、武器輸出を原則的に可能とするものである。この原則の下では、武器輸出が歯止めなく拡大し、我が国の武器が紛争に使用され、我が国の平和国家としての立場を変えてしまうこととなる。
安倍内閣がこの原則を閣議決定した理由は、戦闘機などの新型兵器の国際共同開発及び生産に参加し易くし、国内の防衛産業の基盤を強化すること、並びに米国やその他の国との武器輸出を通じて安全保障・防衛協力を強化することにある。これにより、米国のみならずこれらの諸国との将来の集団的自衛権行使へと踏み出す契機となることが強く懸念される。
以上から、上記閣議決定は、「国際協調主義に基づく積極的平和主義」という名の下で、武器輸出による相手国との軍事的関係を強化し、軍事力によって我が国やアジア太平洋地域の平和と安全を確保しようとするものである。これは憲法第9条が定める恒久平和主義を後退させるものといわざるを得ない。
3、前述のとおり、武器輸出三原則は、これまで国是とされてきた基本政策であるにもかかわらず、国会で議論がつくされないまま閣議決定でこれを変更した。これは、国民主権の基礎となる国会の最高機関性(憲法第41条)を著しく軽視するものであり、当会としても放置することができない。
4、以上のことから、上記閣議決定に抗議し、撤回を求めるものである。

以上