声明・決議・意見書

会長声明2023.03.16

「袴田事件」再審開始決定に関する会長声明

2023年(令和5年)3月16日

広島弁護士会 会長 久 笠 信 雄

 

2023年(令和5年)3月13日、東京高等裁判所は、最高裁判所の決定による差戻抗告審での審理結果として、静岡地方裁判所の再審開始決定を認める内容となる決定をした。当会は本決定を極めて高く評価するものである。

 

本件は、1966年(昭和41年)6月30日未明、旧清水市(現静岡市清水区)の味噌製造会社専務宅で、一家4名が殺害された強盗殺人・放火事件である。袴田巖氏は、当初から無実を訴えていたが、長時間の厳しい取調べを受け続けた結果、パジャマを着て犯行を行ったと自白させられてしまった。また、事件から1年2か月後、一審の公判中に、麻袋に入れられ多量の血痕が付着した5点の衣類が味噌タンク内の味噌の中から発見され、検察官は、犯行着衣はパジャマではなく5点の衣類であり、事件直後袴田氏がタンク内に隠したものだなどと主張を変更した。静岡地方裁判所は、袴田氏が5点の衣類を着用して被害者らを殺傷したと認定し、死刑判決を下した。1980年(昭和55年)11月19日、最高裁が袴田氏の上告を棄却し、死刑判決が確定した。袴田氏は、翌1981年(昭和56年)4月に、第一次再審請求を申し立てたが、2008年(平成20年)3月に最高裁が袴田氏の特別抗告を棄却して終了した。

その後、弁護団は、2008年(平成20年)4月25日、第二次再審請求を申し立て、5点の衣類に関する味噌漬け実験報告書やDNA鑑定などを新証拠として提出し、5点の衣類が袴田氏のものでもなく、犯行着衣でないことを明らかにした。

また、現行刑事訴訟法には規定されていないが、検察官が応じなかった手持ち証拠を開示するよう強く求めた弁護団の証拠開示請求に対し、裁判所が任意の開示を促し、裁判所の勧告によって多数の証拠が開示された。その中には袴田氏の無実を示す極めて重要な証拠が含まれていた。

 

2023年(令和5年)3月13日の即時抗告棄却決定は、弁護人が提出した5点の衣類の色に関する証拠を新証拠と認め、確定審で取り調べられた旧証拠と総合評価することによっても、5点の衣類が犯行着衣であり、袴田氏の着衣であることに合理的な疑いが生じ、その結果、袴田氏を本件の犯人とした確定判決に合理的な疑いが生じることは明らかであるとして、再審開始を支持する判断を行った。これらの判断手法は、白鳥決定等によって確立された総合評価の枠組みに沿うものである。

 

袴田氏は、47年間にも及ぶ長期間の身体拘束を受け、現在87歳と高齢になっており、袴田氏の救済は一刻も早くおこなわれなければならない。

当会は、検察官に対して、本決定に従い、特別抗告を行うことなく、速やかに袴田氏の再審の審理が開始されることを強く求める。

また、前記のとおり、第二次再審開始決定にあたっては、再審請求審における証拠開示が実現したことが大きな要因の1つとなった。万が一にも無辜が処罰されることがないように、証拠開示を制度として認めたうえ、再審開始決定に対する検察官の抗告を禁止することなどを規定した再審法の改正が喫緊の課題である。

当会は、今後も、えん罪を防止するための制度改革の実現を目指して全力を尽くす決意である。

以上