声明・決議・意見書

その他2026.05.03

憲法記念日を迎えるに当たっての会長談話

2026年(令和8年)5月3日
広島弁護士会 会長 古河 真人

1 本日は、1947年(昭和22年)5月3日に日本国憲法が施行されてから79回目の憲法記念日です。

1945年(昭和20年)8月6日に広島に、同月9日に長崎に、人類史上初めて原子爆弾が投下され、同年12月までに約21万人もの人々の命が奪われました。日本が第二次世界大戦に敗戦してから、81年が経とうとしている現在も、多くの人々が原爆症に苦しんでいます。

日本国憲法は、敗戦翌年の1946年(昭和21年)、連合国軍の占領下において公布され、1947年(昭和22年)に施行されました。第二次世界大戦では、日本人の死者数は約310万人以上、日本の行為によるアジア・太平洋各国の死者数は約2000万人以上といわれる犠牲が生じました。このような悲惨な第二次世界大戦を体験し、日本は、二度と政府の行為によってこのような過ちを繰り返さないために、新たな憲法を制定しました。それが現在の日本国憲法です。この日本国憲法では、前文において全世界の国民が平和のうちに生存する権利を有することを確認し、第9条において戦争の放棄を定め、「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない」として、他国に類を見ない、徹底した平和主義を採用しています。

家族や大切な人を失い、家を焼かれ、食糧もなく飢えに苦しんだ多くの国民は、この憲法を大歓迎しました。

2 それから81年が経った現在、海外に目を向けると、2022年(令和4年)2月24日のロシア連邦によるウクライナへの軍事侵攻、2023年(令和5年)10月7日のガザ地区を拠点とするハマス等パレスチナ武装勢力によるイスラエルへの攻撃、イスラエルによる大規模な報復攻撃、2026年(令和8年)2月28日の米国及びイスラエルによるイランへの攻撃等、国際法を無視した武力行使が繰り返されています。これらの戦争は未だ終結を見ず、戦禍による犠牲者は増え、多くの人々が苦しみ、世界経済も大きな打撃を受けています。

3 日本国憲法を持つ日本も、現在、危機的な状況にあります。

2015年(平成27年)9月19日には、集団的自衛権の行使を容認する安保関連法が国会で強行採決され、2022年(令和4年)12月16日には、敵基地攻撃能力(反撃能力)を保有し活用する方針が明記された、いわゆる安保三文書の改定を、政府は閣議決定しました。

これに伴い、2023年度(令和5年度)から2027年度(令和9年度)までの5年間で43兆円もの巨額の防衛予算を計上する方針としました。今年度の防衛費は史上初めて、9兆円を超え、安保三文書の防衛力整備計画が始まる前の2022年度(令和4年度)と比べると、およそ7割増です。これを賄うために所得税に1%上乗せする防衛特別所得税も2027年(令和9年)1月から始まります。

さらに日本政府は、2026年(令和8年)4月21日、防衛装備移転三原則を改訂し、海外への武器輸出を原則可能にしました。他国に類を見ない、徹底した平和主義を採用する憲法を持つ日本が製造した武器により、海外で人が殺される事態が生じようとしています。

このように、現在の日本が進みつつある道は、憲法の平和主義の理念からかけ離れているといわざるを得ません。

4 世界で現在も絶え間なく続く戦争は長期化し、多くの人々が苦しみ続けていることからも明らかであるとおり、不安定な世界情勢の時代にこそ必要なことは、対立を激化させる軍拡や武力による威嚇ではなく、「全世界の国民が」「平和のうちの生存する権利」(前文)を定めた日本国憲法の理念を実現していくことです。軍拡の道に進むことは、攻撃を受けた場合に、より大きい打撃を相手に与えるという軍事的な抑止力に頼ることにほかならず、憲法第9条において「武力による威嚇」を放棄している日本国憲法とは相容れません。そもそも、軍事的な抑止力は、相手の認識に頼った極めて主観的なものであり、ひとたび抑止が敗れると、戦争という暴力の連鎖に陥ります。

加えて、多くの核兵器が世界に存在する現在、核兵器の抑止が崩れると核兵器が使用されることとなり、人類が滅亡する危険があります。意図的ではなくとも、人為的ミスや誤作動により核兵器が使用される可能性もあり、これまでも実際に、機器の誤作動等により、核戦争の勃発寸前に至ったこともあります。このような核兵器は存在すべきではない非人道的兵器であり、一刻も早く廃絶しなければなりません。

今、私たちはこれらの歴史から改めて学び、二度と政府の行為によって戦争の惨禍を招かない為に、日本はどう行動するべきなのかについて冷静に判断することが必要です。

5 当会は、被爆地ヒロシマの弁護士会として、これまでも、安保関連法、安保3文書は憲法9条等に反するものであり、許されないと訴えてきました。さらにロシアのウクライナ侵攻に対しても非難する声明を発出し、核兵器根絶の推進を重ねて訴えてきました。昨年にも、日本原水爆被害者団体協議会が2024年(令和6年)のノーベル平和賞を受賞したことを受け、これを歓迎するとともに、核兵器禁止条約の署名・批准を求める会長声明を発出しています。

広島平和都市記念碑には、「安らかに眠って下さい 過ちは繰返しませぬから」と刻まれています。憲法記念日の本日、被爆地ヒロシマの弁護士会である当会は、二度と戦争の惨禍を繰り返さず、核兵器廃絶を実現するため、提言や意見表明などを通じて、日本国憲法の理念が社会に行き渡るよう、今後も活動を続けていくことを、改めて表明します。

以上