声明・決議・意見書

会長声明2007.06.18

死刑執行停止を求める会長声明

広島弁護士会
会長  武井康年

1  新聞報道によれば、昨年12月25日、東京拘置所において2名、大阪拘置所において1名、広島拘置所において1名の死刑確定受刑者に対し、また、本年4月27日、東京拘置所において1名、大阪拘置所において1名、福岡拘置所において1名の死刑確定受刑者に対して死刑が執行され、わずか4か月間に合わせて7名の命が奪われた。これほど短期間の間に死刑が執行されたことは近年では極めて異例な事態であると言わざるを得ない。
2  現在、国際社会において、国連加盟国が191カ国となっているが、合計128カ国が死刑を法律上または事実上廃止しており、死刑廃止は国際的な潮流となっている。
我が国の現行の死刑制度に対しては、1980年代に4名の死刑確定受刑者に対する再審無罪判決がなされたことに見られるように誤判の場合に取り返しがつかないこと、死刑判決と無期懲役判決との間に明確な量刑基準があるとは言えないこと、死刑判決がなされたときに被告人の意思で上訴せず、一審判決のみで死刑が確定する場合があること,死刑が残虐な刑罰であること,犯罪抑止効果がないこと,死刑執行に関する情報が十分に開示されていないこと,などの問題点が指摘されている。
3  日本弁護士連合会は、2002年11月、死刑執行を停止して、死刑制度の存廃についての国民的議論を尽くし、制度の改善を行うことを求め、その間は、死刑確定受刑者に対する死刑執行を停止することを求める立場を明らかにしてきている。当会においても、2004年8月28日に、「死刑執行停止を考える」シンポジウムを開催し、死刑制度の存廃問題と死刑執行停止についての議論を行ってきたところである。この議論の中でも,死刑制度の存廃問題について国民的議論を十分行うととともに,その議論が尽くされるまで死刑執行を停止すべきであるとの意見が多数を占めた。
4  冒頭に指摘した2度にわたる死刑執行は、国会の閉会中や、開会中の大型連休前になされており、いずれも、死刑執行についての国会での論議を避けようとする意図が窺われる。
当会は、これらの確定受刑者に対する死刑が執行されたことについて抗議するとともに、死刑をめぐる情報が開示された上、死刑の存廃についての国民的な議論が尽くされるまで、一定期間、死刑の執行を停止するよう改めて要請する。

以上