声明・決議・意見書

会長声明2007.05.24

憲法改正国民投票法の制定に厳重に抗議する会長声明

広島弁護士会
会長  武井康年

去る5月14日、参議院本会議において、憲法改正国民投票法案が野党の反対を押し切り、与党のみの賛成多数で可決された(以下,本法という。)。当会は、既に4月11日の会長声明(以下,前声明という。)により、この法案の根本に関わる問題点を指摘したが,それらの問題点について何ら解決されないまま本法案が可決されたことに対して厳重に抗議する。
日本国憲法は、憲法改正についての規定(第96条)により、「国会の発議」と「国民の過半数の賛成」の双方を必要として、硬性憲法としての性格を明らかにするとともに、前文及びこの規定においては徹底した民主主義が採られていて、法律の制定等とは異なり、憲法改正権はあくまで国民の直接的な意思に基づくという原則が示されている。しかし、本法には、こうした憲法改正に関する規定の趣旨が十分に反映されておらず、国民主権という憲法上の大原則に関わる様々な問題点が残されたままになっている。
また,本法には、参議院での委員会採決において、18項目にも及ぶ附帯決議が付されているが、このように多数の附帯決議が付されていること自体、この法律が多くの欠陥を抱えたまま制定されたことの証しである。そして、附帯決議の中には、前声明で指摘した問題点、すなわち、最低投票率を決めていないこと、改正の発議から投票までの期間が短期間であること、国民投票運動に対する制約、国会に設置される「国民投票広報協議会」の運営、テレビ等の有料意見広告のあり方、投票を求める事項をどのように決めるかなどの問題点が指摘されている。その他にも、成人年齢について他の法律との整合性をどのように図るのかなど、今後に残された課題も多い。
以上のとおり、本法について、十分な審議を尽くすことなく、また極めて多くの問題点を残したまま与党のみで可決成立させたことに対して、厳重に抗議するため、本声明を発するものである。

以上