声明・決議・意見書

会長声明2008.02.13

犯罪被害者等の少年審判への関与に関する会長声明

広島弁護士会
会長  武井康年

1  法制審議会少年法(犯罪被害者関係)部会は、2008年(平成20年)1月25日、少年法「改正」要綱(骨子)(以下、当該要綱という。)を採択した。当該要綱は、犯罪被害者等の記録の閲覧・謄写を認める要件を緩和されていることは評価できるものの、以下のような問題点がある。当会は、当該要綱に関し、慎重かつ十分な審議を行い、あるべき要綱に修正されるよう強く求める。
2  第1に、犯罪被害者等による少年審判の傍聴を認める制度を新設している点である。少年は、成長発達の途上にあり、精神的に未熟であって、社会的な経験にも乏しいから、犯罪被害者等が審判を傍聴すると、精神的に萎縮し、心情を素直に述べたり、事実関係について正直に発言することができなくなるおそれがある。それでは、少年の真の反省が得られなくなるのみならず、その弁解を封じ込め、誤った事実認定がなされるおそれをも生じさせる。これは、少年が成長発達の途上にあり、可塑性に富むことから、少年の非行に関しては、可能な限り教育による改善更生をはかることが再犯防止にも有効であるとともに、少年の成長を支援することにもつながるとした少年法の理念に反するものである。犯罪被害者等が審判廷に在廷することが、少年の内省を深め、少年の健全育成に資するような場合には、現行の少年審判規則29条を活用することにより、犯罪被害者等の審判への出席を認めることが可能なのであり、そのような範囲にとどめるのが少年法の理念に適うと言うべきである。
3  第2に、記録の閲覧・謄写の対象範囲を広げる余地を残している点である。すなわち、法律記録の少年の身上経歴(出生にまつわる秘密や家族関係、身体や精神面における障害や医学的所見)など、プライバシーに極めて深く関わる情報が多く含まれている。これらの情報が犯罪被害者等にも開示されることになれば、少年やその家族等のプライバシーを侵害するだけでなく、ひいては適切な処分決定をするために必要な情報について、裁判所が少年やその家族等から収集することが困難となる可能性もある。したがって、少年の身上経歴などプライバシーに関する部分については、閲覧・謄写の対象範囲から除外すべきである。
4  当会は、上記のような問題点を踏まえ、当該要綱について、慎重かつ十分な審議を行い、あるべき要綱に修正されるよう強く求めるものである。

以上