声明・決議・意見書

会長声明2010.03.10

全面的国選付添人制度の実現を求める会長声明

広島弁護士会
会長 山下哲夫

全面的国選付添人制度の実現を求める会長声明
第1 結論
当会は,国に対し,国選付添人制度の対象事件を,少年鑑別所に送致された少年の事件全件にまで拡大する旨の少年法改正を速やかに行うよう強く求める。
第2 理由
少年審判事件において,弁護士は,付添人として,非行事実の認定や保護処分の必要性の判断が適正に行われるよう活動している。また,家庭や学校・職場など少年を取りまく環境の調整を行い,少年の立ち直りを支援する活動も行っている。
審判を受ける少年にとって,弁護士付添人の権利擁護の必要性は極めて高いものであるにもかかわらず,その選任率は,少年鑑別所に収容され審判を受ける少年の約40%,審判を受ける少年全体では約8.5%に過ぎない(2008年統計)。成人の刑事手続において被告人の98%以上に弁護人が付されていることと比較すると,心身ともに未成熟な少年に対する法的援助が不十分な状況にあることは明らかである。
このような状況が生じている大きな原因として,少年審判における国選付添人制度の範囲の限定が挙げられる。現行の制度は,主に殺人や強盗などの重大事件を対象とし,国選付添人を付するか否かは裁判所の裁量に委ねられている。そのために多くの事件で少年に国選付添人が選任されない事態が生じている。
さらに,被疑者段階の国選弁護人制度の対象が窃盗や傷害などの事件にまで拡大されたが,これにより少年の場合には,「捜査の段階では国選弁護人が選任されるにもかかわらず,家庭裁判所の審判になると国選付添人が選任されない」という事態が生じており,制度上の矛盾は一層明らかとなっている。
こうした問題状況を打開すべく,日弁連は,少年に対する法的援助を充実させる臨時的・暫定的措置として,少年保護事件付添援助制度を設けている。これは,全会員が特別会費を負担して作る少年・刑事財政基金を財源として,国選付添人が選任されない事件の少年・保護者に対して弁護士費用を援助する制度である。
当会においても,この制度を積極的に利用しており,従前から当会で行ってきた,少年が逮捕勾留された場合に,当番弁護士として出動した弁護士が引き続き被疑者弁護人・付添人になるという活動は,被疑者段階の国選弁護人制度の実施及び対象事件の拡張により,変容しつつ維持されているが,この活動の維持には,前記少年保護事件付添援助制度の利用が不可欠の要素となっている。
しかしながら,捜査から審判に至る一連の手続きにおいて,適正な手続きを保障し,更生の支援をするという法的援助を与えることは,本来,国の責務である。心身ともに未成熟であり,必要性がより高いにもかかわらず,少年への法的援助が成人よりも不十分である,というアンバランスな状況は速やかに改善されなければならない。とりわけ,少年鑑別所で身柄を拘束された少年については,精神的負担が大きいこと,事件の軽重を問わずその生育歴・家庭環境にも大きな問題を抱えるケースが多いこと,少年院送致などの重大な処分を受ける可能性が高いことから,国選付添人による法的援助を早急に整備しなければならない。
よって,上記のとおり,速やかな法改正を求めるものである。

以上