声明・決議・意見書

会長声明2011.03.31

死刑確定者と弁護人との再審請求打合せ接見についての国家賠償請求事件に関する会長声明

広島弁護士会
会長 大迫唯志

本年3月23日,広島地方裁判所民事第1部は,広島拘置所内で行われた,死刑確定者と再審請求手続の弁護人に選任されていた当会会員2名との再審請求打合せのための接見に際し,同所長が職員を立ち会わせたことが違法であるとして,国に対し,死刑確定者及び当会会員2名への国家賠償を命じる判決を言い渡した。
再審制度は,確定判決を受けた者について,新たな証拠に基づいて当該確定判決の誤りを是正し,無辜の者を救済することを目的とする,いわば刑事手続の最後の砦である。昨年3月26日再審事件で無罪判決が言い渡された足利事件をはじめ,これまでにも再審事件での無罪判決が言い渡されており,また,科学的な知見の進歩によって過去の捜査を見直すことが可能となるなど,今後ますます再審制度の重要性が高まっている。
このような再審制度は,救済手続としての観点から,再審理由の存否の判断において厳格・形式的な解釈を行うなどの消極的運用がなされるべきではなく,さらに適正な再審制度の運用のためには,再審手続に不可欠な弁護人との打ち合わせのための面会の機会とその秘密性が十分に保障される必要がある。
現在,広島拘置所をはじめ多くの刑事施設においては,受刑者・死刑確定者は,確定判決の効力によって拘束されている者であり,被告人・被疑者とはその立場を異にしているという理由から,再審の開始決定が出るまでの間は,秘密接見交通権の保障を前提とせず,弁護人との面会も,原則として職員の立会の下で行われるべきであるとして,刑事施設の長の裁量によって立会の必要性の有無を判断する運用が行われている。
しかし,再審開始決定に至る以前の再審請求手続において,確定判決を覆すに足りる事情の存否が実質的に検討されるなど,再審開始決定に至るまでの過程が決定的に重要であり,再審請求手続における弁護人には,再審手続の弁護人と何ら異ならない活動が必要とされている。従って,受刑者・死刑確定者や再審請求の依頼を受けた弁護人にとっては,再審請求手続及びその準備段階においても,刑事施設職員の立会のない接見が認められなければ,再審請求に向けた適正な手続が保障されているとは言えない。
よって,当会は,すべての刑事施設において,上記判決の趣旨を真摯に受け止め,受刑者・死刑確定者と再審請求の依頼を受けた弁護人との面会を立会なく実施されることを求める。

以上