声明・決議・意見書

会長声明2011.09.29

法曹の養成に関するフォーラム第一次取りまとめに対する会長声明

広島弁護士会
会長 水中誠三

内閣官房長官,総務大臣,法務大臣,財務大臣,文部科学大臣及び経済産業大臣の申し合わせにより開催されている「法曹の養成に関するフォーラム」(以下「フォーラム」という)は,法曹志願者が減少し,その質の低下も指摘される等の法曹養成制度の現状を踏まえ,法曹養成制度全体についての論議を行うために設置された機関であるが,2011(平成23)年8月31日,司法修習生の給費制問題について貸与制への移行を基本とする第一次取りまとめ(以下「本取りまとめ」という)を行った。
本取りまとめは,法曹人口問題,法科大学院の在り方等の法曹養成制度全体にかかわる重要課題について本格的な審議を行わないまま,給費制に関して,本年5月25日から8月31日までの短期間に,わずか2回の実質審議により行われたものである。しかも,その審議は,当事者と言える法科大学院生やその修了生,司法修習生等の法曹志願者の意見を十分に聞かず,また,貸与制移行により発生する債権管理コストなど,貸与制移行に伴う財政面への影響について具体的な検証がなされていないなど,拙速と評価せざるを得ない。
現在の法曹三者統一の修習制度は,戦後の司法制度民主化の一環として実現した国民の権利擁護のための重要な制度であり,司法インフラとしての弁護士,裁判官及び検察官の養成に国家が責任を持つとの理念の下,司法修習生に修習専念義務や守秘義務を課すなど,最高裁判所の指揮監督の下で公務員同様の厳しい規律を課している。司法修習生に対する給費制はその代償措置と言えるが,本取りまとめは,そのような点を十分に考慮することなく,財政難と司法修習終了後の経済状況を中心とした議論により,貸与制への移行を取りまとめており,誠に遺憾である。
法曹志願者減少の要因には,司法試験の合格率の低迷,司法試験合格後の就職状況(特に,裁判官・検察官の採用員数が微増に留まること)及び法科大学院の高額な学費負担等が考えられ,このような問題点を含む法曹養成制度全体についての議論が行われないまま,司法修習生に対する給費制のみを取り上げ,これを廃止して貸与制を実施することは,法曹志願者をますます減少させ,経済的理由により法曹になることを断念する事態を広範に生じさせることは明らかである。
よって,当会は引き続き給費制の存続を訴えるとともに,少なくともフォーラムで法曹養成制度全体の議論が結論を見るまでの間は貸与制を実施しないよう法改正を求める次第である。

以上