声明・決議・意見書

会長声明2011.11.09

労働者派遣法の抜本的改正のための早期審議入りを求める会長声明

広島弁護士会
会長 水中誠三

2008年(平成20年)秋のアメリカの金融危機に端を発した経営不安の中で、わが国においても、いわゆる「派遣切り」が多発し、多くの派遣労働者が雇用と住居を失い社会問題化したことは記憶に新しいところである。その後、派遣労働者の保護、雇用の安定を図るための法改正の機運が高まり、労働政策審議会における議論を経て、政府は、2010年(平成22年)3月に労働者派遣法の一部改正法案を閣議決定した上、国会に上程した。
同法案は、①法律の名称・目的に労働者保護を明記し、②登録型派遣や製造業務派遣を原則禁止し、③違法派遣についての直接雇用申込みみなし規程を創設するなど、派遣労働者の保護の観点からの規制強化に踏み込んでおり、現状を改善するための一定の効果が期待される内容となっている。
ところが、同法案は、同年6月16日の国会閉会に伴い継続審議となった後、国会情勢の影響もあって、現在まで、実質的な審議は進められておらず、成立の目途は立っていない。
同法案には、登録型派遣や製造業務への派遣を原則禁止とするその例外の範囲や、違法派遣が直接雇用となった場合の法的効果など、なお検討・修正されるべき点もあることは、日本弁護士連合会の2010年(平成22年)2月19日付け「労働者派遣法の今国会での抜本的改正を求める意見書」で指摘しているとおりである。
しかしながら、これらの点も含め、何らの審議もなされないままに改正手続が実質的に止まっている現状は、結果として、改正の目的とされる派遣労働者の保護、雇用の安定を先延ばしにしているに等しい。
したがって、当会は、派遣労働者の保護、雇用の安定のための方策を実現させるため、国会において、労働者派遣法の抜本的改正に向けた審議を一日も早く開始し、同法案の不十分な点については充実した審議を通じて修正した上、よりよい改正が速やかになされるよう強く求めるものである。

以上