声明・決議・意見書

会長声明2013.03.21

朝鮮高級学校を高校無償化の対象から排除しないことを求める会長声明

広島弁護士会
会長 小田清和

文部科学省は,2013年2月20日付けで,公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校等就学支援金の支給に関する法律施行規則(文部科学省令第13号。以下「省令」という。)の一部を改正した。
この一部改正とは,省令第1条第1項第2号において外国人を専ら対象とする各種学校で高校無償化法の対象校を次の(イ)外国の学校の高等学校と同等の課程を有するもの,(ロ)文部科学大臣が指定する団体の認定を受けたもの,(ハ)それ以外の高等学校の課程に類する課程を置くものと認められるものとされていたところ(ハ)を削除するものであった。
改正前の省令では,日本との国交の有無にかかわらず,日本の高等学校と同程度の課程を持つと評価される学校については,文部科学大臣が個別に指定することにより就学支援金などの対象とすることができることとしていたが,今回の改正は,かかる個別指定の根拠条文を削除したのである。
下村博文文部科学大臣は,2012年12月28日の定例記者会見において,拉致問題の進展がないこと等を理由として朝鮮高級学校の指定の根拠を削除する旨の発言を行っており,省令改正が朝鮮高級学校を制度の対象から除外することを目的としたものであることは明らかである。
2010年3月および2013年2月の日本弁護士連合会会長声明においても指摘するとおり,高校無償化法の趣旨・目的は,「高等学校等における教育に係る経済的負担の軽減を図り,もって教育の機会均等に寄与すること」にあり,拉致問題の進展がないこと等を理由に特定の学校のみを排除することは,前記高校無償化法や子どもの権利条約第28条の趣旨に反するものである。
また,朝鮮高級学校に通う生徒(朝鮮籍だけでなく韓国籍,中国籍及び日本国籍等の子ども)と日本の私立学校や他の外国人学校(東京韓国学校中・高等部や東京中華学校,横浜中華学院など)とを区別し,朝鮮高級学校のみを高校無償化制度の対象から除外した省令改正は,中等教育や民族教育を受ける権利にかかわる法の下の平等(憲法第14条)に反するおそれが高く,さらには,国際人権(自由権・社会権)規約,人種差別撤廃条約,子どもの権利条約が禁止する差別にあたるものであって,この差別を正当化する根拠はない。
また,日本全国に10校ある朝鮮高級学校は,2010年11月末までに上記(ハ)に基づく指定の申請を適法に終えていたにもかかわらず,文部科学省は,申請から2年以上も判断を先送りした上,個別指定の根拠条文自体を削除する改正をおこない,この度省令改正がなされたことなどを理由として,朝鮮高級学校を制度の対象から外したものであり,手続的にも重大な疑義がある。
以上より,当会は,内閣総理大臣及び文部科学大臣に対し,上記省令改正の撤回を求めるとともに,朝鮮高級学校に対しても,他の学校と同じく速やかに就学支援金支給対象校として指定が行われるよう強く求めるものである。

以上