声明・決議・意見書

会長声明2014.07.31

広島県の最低賃金額の大幅な引き上げを求める会長声明

広島弁護士会
会長 舩木孝和

現在,広島県の地域別最低賃金は,1時間733円(2013年10月24日効力発生)であり,最低賃金で働いた場合の手取り収入よりも,生活保護費の方が高い「逆転現象」が生じている。しかも,逆転解消に必要な最低賃金の引き上げ額は,全国で2番目に大きいとされている。
地域別最低賃金は,中央最低賃金審議会における最低賃金改定の論議を受けて行われる各都道府県の地方最低賃金審議会での審議の結果を踏まえて,各都道府県の労働局長において定めるところ,昨年までは小幅な引上げがなされるにとどまり,最低賃金制度が,労働条件の改善を図り,もって労働者の生活の安定等に資するという目的(最低賃金法1条)に沿って機能してきたとは,到底言い難い。近年では,非正規労働者の数が全労働者の4割近くを占めるまでに増加し,その結果,家計を支える役割を担う非正規労働者も多数現れ,いわゆるワーキングプアと呼ばれる貧困層が広がり続けている。こうした社会の現実を直視して,最低賃金制度を「すべての労働者を不当に低い賃金から保護する安全網」(セーフティーネット)として実効的に機能させるためには,最低賃金でフルタイム働いた場合にも,人間らしい生活を送ることができる社会を志向して,最低賃金額の引き上げが検討されなければならない。
そして,近時の消費税の増税に加え,円安の進行による電気料金,小麦粉,食用油等,光熱費や生活必需品の価格の上昇傾向(総務省公表の消費者物価指数は,前年同月比で,本年4月には3.4パーセント,本年5月には3.7パーセント上昇している。)といった状況をも踏まえるならば,昨年までのような小幅な引上げでは到底足りないというべきであり,2010年(平成22年)6月18日に閣議決定された「新成長戦略」に明記された「全国最低800円,全国平均(全国加重平均)1000円」の最低賃金額目標を早急に実現すべきである。
したがって,当会は,広島県の地域別最低賃金の大幅な引き上げを求めるものである。

以上