声明・決議・意見書

意見書2014.08.22

「特定秘密の保護に関する法律施行令(案)」に対する意見書

広島弁護士会
会長 舩木孝和

当会は,2014年7月24日付けで,内閣官房特定秘密保護法施行準備室において公表され,意見募集がなされている「特定秘密の保護に関する法律施行令(案)」(以下「施行令案」という。)について,以下のとおり意見を述べる。

第1 はじめに
特定秘密保護法は,国民主権と民主主義の基盤である国民の知る権利,報道・取材の自由やプライバシーの権利等の憲法の基本原理と基本的人権を侵害するなどの重大な問題をはらんでいる。同法については,直ちに法律自体を廃止し,抜本的な見直しを行わなければならないと考えるが,仮に抜本的見直しのないまま同法を施行するとしても,施行令案は著しく不十分であるので,以下詳述する。

第2 意見の趣旨及びその理由
1 施行令案第3条第1号(法第3条第1項ただし書の政令で定める行政機関の長)について
【意 見】
金融庁,法務省及び厚生労働省の長を第3条第1号に加えるべきである。
【理 由】
金融庁,法務省及び厚生労働省が2012年12月31日時点で保有していた特別管理秘密文書等の件数は,金融庁が49件,法務省が0件,厚生労働省が136件であった(平成25年3月12日衆議院議員赤嶺政賢君提出 特別管理秘密及び秘密取扱者適格性確認制度に関する質問に対する答弁書)。したがって,法務省については秘密指定機関に加える必要性が無いため,第3条第1号に加えるべきである。
同様に,金融庁もごく少数の特別管理秘密しか扱っていないことから,秘密指定機関に加える必要性は乏しく,また同庁が国家の安全保障に関する情報を取り扱っているとも考えがたい。
厚生労働省は金融庁,法務省と比較して特別管理秘密保有数は多いが,同時期に602件の特別管理秘密を保有していた国土交通省は政令案第3条1号に定めてあることから,厚生労働省も加えるべきである。また,厚生労働省が国家の安全保障に関する情報を取り扱っているとも考えがたい。
2 施行令案と秘密保護法4条第4項第7号について
【意 見】
今回の施行令案には,特定秘密保護法4条第4項第7号の政令で定める情報が規定されていないが,今後も規定すべきでない。
【理 由】
特定秘密保護法第4条4項は60年を超える特定秘密指定が出来る情報を1号から6号で示しているが,そもそも60年も先の秘密保護の必要性を今から合理的に予想できるとはとうてい考えられず,特定秘密保護法第4条4項はそもそも削除すべきと考えるが,以下の通り施行令案に付意見を述べるものである。
特定秘密保護法4条第4項第7号では,同項第1号乃至第6号以外の情報でも,政令で定めることができるとしている。
しかし,同項では1号から6号で,60年超の秘密指定できる情報を限定列挙しているにもかかわらず,政令でも定めることができるとすれば,法が限定列挙した意義を没却し,法の潜脱ともなりかねない。
したがって,政令で60年超の例外を定めることは原則的に禁止されるべきであるが,今回の施行令案では同項7号の政令で定める情報は何も規定されておらず,今後も規定すべきではないし,仮に規定されるとしても,極めて限定的な場合に限られるべきである。

以上