声明・決議・意見書

総会決議2008.05.20

法曹養成制度に関する提言決議

決議
法科大学院における教育が、旧前期修習に相当する教育を賄えるようになるまでは、旧前期修習制度に相当するような集合修習を実施すべきである。

決議の理由
平成13年6月12日付司法制度改革審議会意見書(以下、「意見書」という)は、「司法試験という「点」のみによる選抜ではなく、法学教育、司法試験、司法修習を有機的に連携させた「プロセス」としての法曹養成制度を新たに整備すべきである。その中核を成すものとして、法曹養成に特化した教育を行うプロフェッショナル・スクールである法科大学院を設けるべきである」(意見書61頁)とし、法科大学院の教育と司法試験等との連携に関する法律(以下、「法科大学院連携法」という)第1条(目的)は、同法「は、法科大学院における教育の充実、法科大学院における教育と司法試験及び司法修習生の修習との有機的連携の確保に関する事項その他基本となる事項を定める」としている。
意見書は、法科大学院において実施すべき教育内容に「実務教育の導入部分(例えば、要件事実や事実認定に関する基礎的部分)」(意見書66頁)を含めている。
上記のように、法科大学院については、司法試験、司法修習と有機的に連携すること、並びに、一昨年度までの司法修習が果たしていた役割の相当部分を担うことが制度上予定されている。その前提において、昨年度からの新司法試験合格者については、前期修習制度は廃止され、修習生は、いきなり、実務修習に臨むこととなった。
しかし、現実には、新司法試験に合格した法科大学院卒業生の大半が前期修習終了時の修習生に匹敵する能力を身につけている、とは言えないのが現状である。法科大学院の初めての卒業生である新60期の司法修習生については、前期修習の一部を残す形となる導入修習の後に実務修習が実施されたが、その修習終了時における、いわゆる二回試験において、これまでに比して多数の不合格者が出たことは、上記問題の顕在化であると思われる。
その理由は、次のような点にあると考えられる。
1  全く法律を勉強していなかったいわゆる完全未修者にとって3年間という期間は、基本的な法学の知識及び理解の習得に加えて実務的な能力を修得するためにはあまりに短いこと。
2  「法科大学院への裁判官及び検察官その他の一般職の国家公務員の派 遣に関する法律」第1条は、裁判官、検察官等の法科大学院への派遣について定めることにより、法科大学院における法曹としての実務に関する教育の実効性の確保を図り、日本弁護士連合会及び各弁護士会も弁護士を法科大学院に派遣する努力をしているが、現実には、法科大学院において司法研修所の教官に代替するだけの数の実務家教員の確保が十分にできていないこと。
3  新司法試験の内容がそれまでの旧司法試験に比しては、実務的な能 力を試す試験となっているものの、依然として、選択科目1科目と必修の7科目の法律科目毎の試験であるなど、実務修習に臨むために必要な実務的能力を計る試験となり得ていないこと。
4  新司法試験の合格率が、平成18年が48.25%、平成19年が40.18%と、5割にも届かない現状において、多くの法科大学院生の意識は、専ら新司法試験の合格に向けられ、新司法試験との関連性が強いとは言えない実務上重要な科目に、大半の法科大学院生が強く意識を向けるという状況を期待することは困難であると言わざるを得ないこと。
5  法科大学院、司法試験及び司法修習との有機的関連性が現行制度の前提とされているが、法科大学院と司法研修所との間において、法科大学院入学時あるいはそれ以前から修習終了時までのスケジュールを想定しての教育の内容やノウハウの協議伝達等が十分に行われているとは言い難い状況であること、等である。
法科大学院は、大学院生の卒業時における学力が、従前の前期修習終了時の修習生に相応するレベルに達するようにその教育レベルの引き上げを継続して努力すべきことは当然のことではあるが、多数の法科大学院が設立され、その教育の内容及びその成果もまちまちの部分がある現状において、制度の抜本的な見直しが必要な部分もあり、短期的に、上記のような諸問題に大幅な改善がなされ、全国の法科大学院を通じて、その教育が予定されているレベルにまで引き上げられることは、期待し難いところである。
従って、現在の体制の法科大学院において、卒業する大学院生について従前の前期修習を賄える教育が実施できていると認めることが困難な限り、新司法試験合格者に対する前期修習制度を廃止する基本的な前提を欠いている。
平成15年4月1日に施行された法科大学院連携法附則第2条では、「政府は、この法律の施行後十年を経過した場合において、法科大学院における教育、司法試験及び司法修習生の修習の実施状況等を勘案し、法曹の養成に関する制度について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする。」と定め、平成25年頃における再検討を予定している。
しかし、意見書においては、「集合修習(前期修習)と法科大学院における教育との役割分担の在り方については、今後、法科大学院の制度が整備され定着するのに応じ、随時見直していくことが望ましい。」(75頁)とされており、前期修習に関しては随時の見直しが予定されているところである。法科大学院連携法施行後5年を経過した現時点において、問題が顕在化しつつある以上、法科大学院連携法附則2条所定10年の経過を待たず、必要な措置を講ずるべきであるので、本総会において、本決議案を上程した次第である。

以上