声明・決議・意見書

意見書2011.07.13

提携リース契約を規制する法律の制定を求める意見書(2/2)

第2 立法の必要性
1 司法的救済
以上に指摘した被害を救済するため,訴訟等において,ユーザーは,サプライヤーが虚偽の説明があった場合,詐欺取消をし(民法96条1項),提携リースにおけるリース会社とサプライヤーとの関係について,代理,表見代理ないしは締約補助者等の関係があり,もしくはリース会社に効力が及ばないとの主張が信義則上許されないとの法的主張や,消費者契約法による取消,特定商取引法によるクーリング・オフ,公序良俗違反による無効(内容自体の社会的妥当性を欠き,契約締結手続が社会的妥当性を欠く),安全配慮義務違反ないし不法行為(リース会社自身の不法行為に基づく損害賠償責任ないしは使用者責任)に基づく損害賠償責任などの法的責任を追及している。
しかし,当該主張は,割賦販売法とは異なり,明文化されていないため,個々の裁判所の判断によって司法的救済が受けられない場合もある。よって,リース会社とサプライヤーの関係及びこれに基づくリース会社が負うべき義務については,立法によって明確化される必要がある。
2 立法の必要性
経済産業省が平成17年12月6日付で「社団法人リース事業協会に対する指導」として,「提携販売事業者の総点検及び取引停止を含めた管理強化」等の指導をしているにもかかわらず,平成18年1月以降の苦情も多数発生し,ホームページ,セキュリティ関連機器など,電話機以外のリース契約についての被害事例が多くなっている。
リース事業協会は何度も適正化を目指した告知を行っているが,被害は減らず,リース会社は訴訟の場で,リース事業協会の告知に反する主張を行っている。
このようなことからすると,リース会社及びリース事業協会には自浄能力が認められない。
また,ユーザーの救済が図られた裁判例は存在しているものの,ユーザーが敗訴する場合もあり,その最も大きな要因は,ユーザーが,リース会社とサプライヤー間の内部関係を把握するには限界があるということや,クーリング・オフの主張についても,事業の規模,リース物件の使用状況及びリース物件の必要性等,ユーザーが過大な主張立証責任を負担させられていることにある。
よって,かかるユーザーとリース会社との間の主張立証責任の不均衡を是正し,もって,第1に述べた被害を防止するためには,第3に述べる内容等について,新たな法律をもって明確に規定する必要がある。
そもそも,ある者が,ある物件の使用を欲しているにもかかわらず,その購入資金を現金一括で支払うことができない場合に,第三者の金融によってこれを可能とする方法は,貸金,割賦販売,そしてリースの三種類が考えられる。このうち,前二者については,貸金業法 ,利息制限法,出資法及び割賦販売法という規制法が存在し,リースのみ規制法が全くないというのが現状である。このような現状では,消費者被害は,規制の緩い(ない)リースの分野で多発することは容易に推測できるところであり,実際にも消費者被害が多発している現実がある。とりわけ,提携リースは,法規制されている割賦販売と構造が類似している。この点からも,提携リース被害の増加に対して適切な法規制を行うことはまさに急務といえる。
3 民法(債権法)改正との関係
本意見書で述べるとおり,サプライヤー及びこれと提携するリース会社が,無知無経験の消費者や中小零細事業者から,リース契約の形式を利用して,適切な説明を行わないまま,リース物件との対価的均衡を欠く契約を締結させ,本来必要のない金員を支払わせているという実態は看過できないものである。
そうしたところ,現在,法制審議会において民法(債権法)改正に向けた議論が行われており,学者グループが作成した「債権法改正の基本方針」においては,ファイナンスリース契約を典型契約として民法典に規定するとの提案がなされている。しかしながら,「債権法改正の基本方針」には,リース契約の基本型のみが記載されているだけで,上記のようなリース契約の病理現象については何ら考慮されておらず,立法としては極めて不十分である。むしろ,そればかりか,リース契約にいわばお墨付きを与え,提携リース被害を固定化しかねないおそれすらある。紙面の関係上本意見書において詳細に触れることはできないが,仮に,リース契約を立法によって規律するのであれば,少なくとも,本意見書で述べるような,提携リース契約による被害実態について十分に慎重な議論をし,これを踏まえた規制がなされなければならない。

以上