声明・決議・意見書

会長声明2026.10.16

「死刑制度に関する根本的な検討を任務とする公的な会議体」を国会及び内閣の下に早急に設置することを求める会長声明

2026年(令和8年)10月14日

広島弁護士会 会長 古 河 真 人

第1 声明の趣旨

「日本の死刑制度について考える懇話会」が提唱する「死刑制度に関する根本的な検討を任務とする公的な会議体」を国会及び内閣の下に早急に設置すること及び会議体の結論が出るまで死刑の執行を停止することの検討を求める。

第2 声明の理由

1 広島弁護士会は、2020年(令和2年)10月23日、「広島弁護士会は、国に対し、死刑の執行を直ちに停止し、速やかに死刑制度を廃止することを求める」との決議(以下「死刑廃止決議」という)を行い、内閣及び国会に対して同決議を執行している。当会は、同決議を採択後も、毎年10月10日の世界死刑廃止デーに合わせ、死刑制度の問題点、世界における死刑制度廃止状況、被害者遺族に対する精神的・経済的支援の在り方等に関して、市民とともに考えるシンポジウムや勉強会を開催してきた。

また、2022年(令和4年)6月13日、刑法が改正され懲役刑と禁錮刑が廃止され、拘禁刑に一本化された。拘禁刑の刑罰目的は「改善更生を図るため」とされ、刑罰は報復や懲らしめではなく、改善更生目的であることが明確に位置づけられ、2025年(令和7年)6月1日から施行された。これにより、生命を奪い社会からの即時隔離を内容とする死刑制度は、改正された刑罰目的とはますます相容れない制度であることも否定できなくなっている。

2 ところで、死刑制度の廃止は国際的な潮流となり、2023年(令和5年)末には199か国中、法律上または事実上の廃止国は144か国となっているほか、国際司法共助の上でも、外国逃亡者の引き渡しを拒まれるという国益上の不利益の存在が指摘されるなどしている。それにも拘わらず、政府の世論調査において国民の約8割が死刑制度をやむを得ないと回答しているなど、死刑制度についての検討が進んでいない状況を見て、国民各界及び各層の参加を得て、日本の死刑制度のあるべき方向性について提言することを目的として、2024年(令和6年)2月29日「日本の死刑制度について考える懇話会」(以下「懇話会」という)が設立された。懇話会は、同年11月13日付で、死刑制度の存置、廃止の意見を持つ参加者全員一致の意見として「報告書」を公表した。同報告書は、「現行の日本の死刑制度とその現在の運用の在り方は、放置することの許されない数多くの問題を伴っており、現状のまま存続させてはならない」「早急に、国会及び内閣の下に死刑制度に関する根本的な検討を任務とする公的な会議体を設置すること」「会議体においては、具体的な結論を出すまでの間、死刑執行を停止する立法をすることの是非、あるいは執行当局者において死刑の執行を事実上差し控えることの是非についても、これを検討課題とすべきである」と提言している。同報告書は、衆・参議院議長及び内閣総理大臣に手渡しにて執行されている。

3 当会の死刑廃止決議後約6年が経過し、また、懇話会の報告書の提言から2年を経過しようとしているが、この間、死刑の執行が行われ、また、内閣及び国会として死刑制度に関する問題点の存在を含めて、死刑制度に関して検討している様子は見えない。死刑は、国家による人権侵害の極みであり、国連理事会から何度も死刑の執行停止、制度の廃止の勧告を受け続けているにも拘わらず、検討を行う姿勢すら見えないのは、国際社会において人権後進国との評価を受けることになり羞恥すべきことである。

人権尊重を標榜する民主主義国家としては、一日も早く死刑制度を廃止すべきであるが、少なくとも、早急に内閣及び国会において死刑制度に関して根本的な検討を行う会議体を設置し、会議体の結論が出るまで死刑の執行の停止を検討することが肝要である。

4 当会は、現状のまま内閣や国会の姿勢を傍観することは、人権擁護と社会正義の実現を目的とする弁護士会としての使命を果たせないと危惧している。弁護士会としての使命を果たすべく、この度、懇話会が報告書で提言しているように、内閣及び国会に対して、早急に死刑制度を検討するための公的な会議体を設置すること及びその結論が出るまでの間、死刑の執行の停止を検討することを求め、これにより死刑制度が廃止される結論が出されることを期待し、会長声明を発出することとしたものである。

以上