声明・決議・意見書

会長声明2014.11.17

秘密保護法施行令(案)等の閣議決定及び秘密保護法の施行に対する会長声明

広島弁護士会
会長 舩木孝和

平成26年10月14日、特定秘密の保護に関する法律(以下「秘密保護法」という。)の施行令(案)及び運用基準(案)等が閣議決定され、秘密保護法の施行期日が同年12月10日と定められた。
同施行令(素案)等については、同年7月24日から同年8月24日までパブリックコメントが実施され、2万3820件の意見が提出されたが、パブリックコメント締め切りからわずか2週間余りの同年9月10日に、当初素案とほとんど内容を変えないまま、施行令(案)が内閣総理大臣に提出された。報道機関の一部から、パブリックコメントが単なる「通過儀礼」と化していると指摘されているとおり、拙速な判断と言わざるを得ない。
当会はこれまで、秘密保護法は、国民の知る権利、報道・取材の自由や、プライバシー権等の憲法上の基本的人権を侵害し、憲法の基本原理である国民主権と民主主義を危うくするとして、同法の廃止と抜本的な見直しを求め、同施行令(案)等についても不十分である旨意見してきた。
しかしながら、閣議決定された運用基準(案)では、秘密に指定できる情報の範囲をさらに具体化したと説明されているものの、秘密指定できる情報は極めて広範であることに変わりはない。行政機関による違法行為は秘密に指定してはならないことが運用基準(案)には明記されたが、法律や政令に定めはなく、恣意的に秘密指定が行われる危険性が解消されていない。
適性評価制度については、情報保全のために必要やむを得ないものとしての検討が十分になされておらず、評価対象者やその家族等のプライバシーを侵害する可能性が残されたままである。また、評価対象者の事前同意が一般的抽象的であるために、実際の制度運用では、医療従事者等に守秘義務を侵させ、評価対象者との信頼関係を著しく損なうおそれもある。
このほか、恣意的な秘密指定を防止するために、すべての特定秘密にアクセスすることができ、人事、権限、財政の面で秘密指定行政機関から完全に独立した公正な第三者機関が設置されておらず、また、特定秘密を最終的に公開するための確実な法制度がないため、多くの特定秘密が市民の目に触れることなく廃棄されることとなる可能性があるなど、秘密保護法は法律自体に数多くの問題が残されており、施行令や運用基準では、同法の危険性が何ら解消されないことが明らかとなった。
秘密保護法は抜本的な見直しが必要であり、この状況のまま、12月10日の施行を看過することはできない。当会は、秘密保護法を直ちに廃止し、情報公開法や公文書管理法等の改正により不十分な情報公開制度の改善を進めた上で、秘密保全のあり方について、一から国民的議論を行うよう強く求める。

以上